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第8回
「救急訪問看護師」っていうのもありでしょ!

2014/06/25

 表向きには、救急領域の「専門」として活動していますが、個人的には、「救命救急」に特化しているつもりはないので、ニーズがあれば、なんでも屋的な活動を行っています。何せ、呼ばれてナンボ、使われてナンボなので(苦笑)。

患者の「うちに帰りたい」に応えるために
 とある日、当財団の訪問看護ステーションから、患者のケアについてコンサルテーションがありました。依頼内容は、「高流量の在宅酸素療法を行っている患者の清潔ケアが困難そうなので、初回訪問に同行してもらいたい」とのことでした。

 患者は高齢で、基礎疾患に変性性の呼吸器疾患があり、COPDの増悪を繰り返して、何度も他院に入退院している方でした。今回は、「どうしても家に帰りたい」という患者の強い希望があり、本来なら入院適応のところを自宅退院となったようです。在宅酸素療法としては、聞いたこともないくらい高流量で酸素を流さないと、少し体を動かしただけでも呼吸苦が現れ、清拭中にもSpO2が、80%台前半まで低下してしまうくらいの状態でした。

 訪問スタッフは、「こんな状態なので、ケアができるのか不安なんです……」と、心配そう。私としては、それはもとより、在宅酸素としての流量の多さと、「在宅でどうやってこんな量を使っているのだろう。よくCO2ナルコーシスにならないな~。火事大丈夫かしら~」、なんてことが気になっていました。

 さて、いざ患者さんのご自宅へ。いつも私は病院勤務なので、患者宅にお邪魔するのは新鮮です。ご本人は思ったより元気そうで表情も穏やかです。お庭から心地よい風がそよそよと吹いてきます。これなら清拭もできそうかも。自宅での状態を確認して、清拭をしようとしたところ、患者さんが上着を自分で脱いでくれました。ちょっと両腕を上げたりしただけでも、SpO2はやはり80%台へ低下。安静、口すぼめ呼吸で数分するとベースに戻りました。なるべく他動的に清拭をして訪問が終了しました。

 帰り道、訪問スタッフは、「やっぱり在宅は難しいですよね……。こんな状態の患者さんを訪問するのは何かあったら対応できないかも」と不安そう。でも、患者さんは家にいたいと思っているんだよね……、う~ん。

 清拭ケアによる酸素化不良は、酸素消費量の増大に伴うものなので、酸素消費量を最小限にするようケアを工夫することで、可能なはず。ですが、患者さんは訪問した際、「病院にいた時には、看護師さんに苦しくなると辛そうだからと言われて、体拭きはしてもらえなかったんだよね~」とも言っていました。ケアが縮小するのは何とも残念な気がします。

 もし、ケア中に患者の呼吸困難感が改善せず、しばらくたってもSpO2が上がってこなかったら、気胸などといったまた別の問題が起きているはずなので、ケアすること自体に極端に憶病になる必要はないのではないかと思います。例えば、患者自身で動くと苦しくなってしまうのであれば、起座位のまま全介助するなど、患者の意向も確認してケアを工夫することで対応できるのではと考えます。

 ケア中、患者さんは常に“My SpO2モニター”の数値を気にされていました。呼吸困難感は、生命に直接的に関わる不快な症状として常に患者にまとわりつきます。せめて「気持ちがいいな~」と思えるような気分転換ができる機会が提供し、さっぱり体拭きをした後に、庭を眺めて冷たい麦茶でも飲んだら、気持ちいいんじゃないかな~、なんて思いました。

著者プロフィール

木澤晃代氏(筑波メディカルセンター病院看護師長)●きざわ あきよ氏。1997年から筑波メディカルセンター病院勤務。ICU・救急外来勤務を経て、2004年救急看護認定看護師資格取得。08年東京女子医大大学院卒業、急性・重症患者看護専門看護師資格取得。11年特定看護師(仮称)養成施行事業実施課程、12年看護師特定行為・業務試行事業を経て、臨床現場で活躍中。

連載の紹介

木澤晃代の「救命救急の現場から」
特定行為に関わる研修修了者”として救急領域で実践活動を行っている筆者が、臨床現場のさまざまなエピソードを基に、看護業務のあり方、さらには仕事と家庭との両立、専門性の追求といったナースのキャリアに対する想いを綴ります。

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