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第1回
説明して、傾聴して、それからどうしたらいい?

2020/10/16
岩本ゆり(NPO法人楽患ねっと、楽患ナース訪問看護ステーション)

「看護師さん、医師に手術するのとしないのと、どっちがいいかって聞かれたのだけど、どっちがいいと思う?」

 今から20年近く前のこと。病棟看護師7年目の私は、病室で患者さんにこう話し掛けられて、固まってしまいました。インフォームドコンセントという言葉が知られ始めたころ、主治医の説明の場に私も立ち会って、帰室した直後の問い掛けでした。

 話し合いの場に立ち会った私からすると、

・主治医は「どちらがいいか?」とは聞いていなかった。
・メリットとデメリットを分かりやすく説明し、「よく考えてください」と言っていた。
・どっちがいいかを私が決められるはずがない。


 そんな考えが頭の中に浮かびました。

 医師があれだけ丁寧に時間をかけて説明しても伝わっていない、というがっかりした気持ちの中、患者さんにかける言葉が見つからなかったことをよく覚えています。

 しかし、気持ちを落ち着けて、「こういうときは傾聴が大切」と椅子に座って思いを聞き始めましたが、1時間近く患者さんのお話を聞いても答えは出ずに堂々めぐり。「決めることはなんて難しいのだろう」「どうやって支援したらいいのだろう」……。多くの看護師が抱く思いを私も抱え、悶々(もんもん)としていました。意思決定支援という言葉はまだ聞いたこともありませんでした。

著者プロフィール

岩本ゆり(NPO法人楽患ねっと副理事長、楽患ナース訪問看護ステーション所長、医療コーディネーター)●いわもと ゆり氏。1994年東京医科大学看護専門学校、1995年三楽病院附属助産婦学院卒業。東京医科大学病院、東京大学附属病院勤務の後、2002年NPO法人楽患ねっとを設立し副理事長に就任。2003年医療コーディネーター開業。2007年楽患ナース株式会社取締役、2010年楽患ナース訪問看護ステーション所長。共著に『あなたの家にかえろう』(「おかえりなさい」プロジェクト)、『患者中心の意思決定支援:納得して決めるためのケア』(中央法規出版、2011)、『在宅医療 多職種連携ハンドブック』(法研、2016)などがある。

連載の紹介

楽患ナース岩本ゆりの「やってみよう! 意思決定支援」
「どんな治療を受けるべき?」「家に帰りたいけれど、どうしたらいいの?」など、医療の場で患者に次々と迫られる意思決定。看護師としてその支援を行い、医療コーディネーター(意思決定支援者)の活動・育成も行ってきた筆者が、「4つの視点」に基づくロジカルな意思決定支援法について分かりやすく解説。併せて、患者からの相談が多い事例への対応についてご紹介していきます。

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