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「目指すべき老衰」を阻むつらい訴えに対応する(13)肝性脳症による意識障害
意識の周りの「モヤモヤドロドロしたもの」

2020/05/25
平方 眞(愛和病院)

 本連載では、書籍『看取りの技術』の内容の一部を、加筆修正してご紹介します。今回は、がん患者さんの肝性脳症による意識障害への対応法について述べます。

肝性脳症による意識障害はどのような状態か
 肝性脳症による意識障害については、多くの肝不全患者さんを診てきた印象から、本人の意識は真ん中に比較的しっかり残っていながら、意識の周りに「モヤモヤドロドロしたもの」がいっぱいあり、それが邪魔をして外の世界と連絡が取りにくくなっている意識状態の人が多いように感じています(「肝不全で意識障害や黄疸が出てからの経過は速い」参照)。以前からそのようなイメージを持っていましたが、ある日それを確信に変える出来事が起こりました。

 完全に肝性昏睡になったように見える患者さんの奥さんから「もう私たちのことは分からないのでしょうか」と聞かれたことがあり、私は「意識は真ん中にしっかり残っていて、その周りにモヤモヤドロドロしたものがあって、外との連絡が取りにくいような状態だと思います」と、いつものように説明しました。

 すると、それまで全く意識がないように見えた患者さんが「全くその通りです」と突然、声を上げたのです。患者さんのベッドから1mくらい離れたところで奥さんと話していたので、その声を聞いてベッドの近くまで行くと、今度は「先生の言われる通りです」と言葉を変えて伝えてくれたのです。訳の分からない世界に沈んでいってしまっている自分の今のこの状況を分かってくれる人がいた、という喜びの叫びだったかもしれません。私も心が通じた喜びを、がっちり握手をして伝えました。

 ほかにも肝性脳症の初期の人たちにその説明をしたところ、「そういう感じです」と言われることが何回かあり、恐らく多くの患者さんがそのような感じなのだと思います。

著者プロフィール

1990年山梨医科大学(現山梨大学)医学部卒業。武蔵野赤十字病院、町立厚岸病院、自治医科大学血液内科を経て、1994年に諏訪中央病院に着任。96年頃から訪問を中心に緩和ケアを開始し、98年に緩和ケア担当医長に就任。2009年から愛和病院副院長。著書に『看取りの技術』(日経BP)がある。

連載の紹介

平方眞の「看取りの技術」
国内に数少ない緩和ケア専門病院で副院長を務める筆者が、これまで1500人以上の患者を看取ってきた経験を基に、患者・家族をより良い死へと導くための技を紹介します。癌などの基礎疾患を抱えていても「最期は老衰を目指す」というのが、筆者の診療スタンス。そのノウハウとは——。
著書『看取りの技術』好評販売中

 これまで1500人以上の患者を看取ってきた著者が、患者に納得いく最期を迎えてもらうための“平方流”看取り方を公開。迫り来る「多死社会」を意味あるものにするため、患者を「より良く看取る」ための技と心得を、終末期医療に携わるすべての医療者に向けて伝授する。(平方 眞著、日経BP社、3240円税込)

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