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「悪い知らせ」を伝えるときに心がけていること

2016/05/11
平方 眞(愛和病院)

 本連載では、書籍『看取りの技術』の内容の一部を、加筆修正してご紹介します。

 緩和医療の現場では、患者さんや家族にとって、悪い知らせを伝えなければならない場面がたくさんあります。状況は正しく理解してほしい、絶望せずにできたら前向きになってほしい、本人と家族が医療者と力を合わせるきっかけにしたいなど、目的は数多くありますが、すべてを満足する説明をするのは簡単なことではありません。そのような場面で、より良い結果を得られるように心掛けていることがいくつかあります。

 一つは、場所選びです。患者さんや家族に緊張感を与える場所よりも、落ち着いて考えられ、言いたいことを言えるような環境の方が適しています。

 説明をする時間帯にも気を配ります。医療者は昼間は忙しいことが多く、家族が来られる時間とも合わせると、話をするのが夕方以降になってしまうことが少なくないと思います。その後に予定が入っていなければゆっくり話ができるため、医療者としては好都合です。しかし、がんの場合、病状説明と言えば大抵が悪い知らせになります。夜に向かう時間帯に伝えられると、説明の後、眠れなくなる患者さんも多く、翌朝には立派な抑うつ状態になってしまうこともあります。家族と一緒でも一家そろって沈んでしまうこともあります。そのため、可能であればフォローできる体制が整っている昼間のうちに、病状説明をするように私は心掛けています。

 話をするときの態度も、大変重要です。人は会話をするときに、言葉によるコミュニケーションで伝わるのは3分の1程度で、残り3分の2は非言語コミュニケーションだと言われています。病状説明も同じで、穏やかで落ち着いた態度で臨むことを心掛けるのが、重要なポイントです。患者さんや家族は、日常に比べて敏感になっていることも多く、医師のちょっとした癖が気になって話が耳に入らなかったなどと言います。自分の癖というのは案外気付かないものですから、誰かに指摘されたら「教えてくれてありがとう」と、素直に感謝できるといいと思います。

良い説明は念入りな事前準備から
 こうした配慮をして面談するわけですが、言葉による説明も、1度や2度言っただけでは伝わらないことがしばしばあります。納得したような表情でうなずいていたので、理解してもらえたと思っていたら、単なる話を聞くときの習慣でうなずいていただけで、実は何を言われているのか全く分かっていなかったと告白してくれた人もいました。せっかく時間を合わせて話をするわけですから、その機会を最大限に活かしたいものです。そこで私は、病状説明に際して、次のような準備をしています。

 面談の日時や場所が決まったら、面談の目的や話す内容について、看護師やほかの医師などから意見を聞きます。予後予測などを話すことが多いので、自分が話そうと思っている認識で間違いや問題はないか、現在の生活の様子はどうかなど、毎日行われるカンファレンスの中で、あるいは担当看護師に直接、話を聞きます。

 医師の前ではしっかりしていても、その他の時間はほとんどぐったりしているような人もいて、聞かないことには様子が分かりません。次に、「面談票」を作成します。面談時あるいは面談後に話の内容を書いた紙を渡す病院が多いようですが、手書きの面談票は味がある半面、読みにくかったりもします。また、簡潔に書こうと思って箇条書きにすると、後から読んだときに意味が分からなかったりします。

 私は、できるだけ役立つ面談票にしたいと考えて、ある時期から説明する前に面談票を作るようにしました。先に作成することで話のポイントが整理でき、話し忘れを防ぐことができる上、話すときに相手の反応を見ながら話をする余裕が生まれます。

面談票の書き方の工夫
 ここで、私が面談票を書く際に留意していることを紹介しましょう。まず、箇条書きではなく、読んで意味が分かる文章の形で書きます。医学用語が箇条書きされた紙よりも文章の形で書いた方が、医療者でない人が後から読み返したときに理解しやすいと考えるからです。

著者プロフィール

1990年山梨医科大学(現山梨大学)医学部卒業。武蔵野赤十字病院、町立厚岸病院、自治医科大学血液内科を経て、1994年に諏訪中央病院に着任。96年頃から訪問を中心に緩和ケアを開始し、98年に緩和ケア担当医長に就任。2009年から愛和病院副院長。著書に『看取りの技術』(日経BP)がある。

連載の紹介

平方眞の「看取りの技術」
国内に数少ない緩和ケア専門病院で副院長を務める筆者が、これまで1500人以上の患者を看取ってきた経験を基に、患者・家族をより良い死へと導くための技を紹介します。癌などの基礎疾患を抱えていても「最期は老衰を目指す」というのが、筆者の診療スタンス。そのノウハウとは——。
著書『看取りの技術』好評販売中

 これまで1500人以上の患者を看取ってきた著者が、患者に納得いく最期を迎えてもらうための“平方流”看取り方を公開。迫り来る「多死社会」を意味あるものにするため、患者を「より良く看取る」ための技と心得を、終末期医療に携わるすべての医療者に向けて伝授する。(平方 眞著、日経BP社、3240円税込)

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