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「積極的な治療は控える」と決めていたものの…

2018/05/04
久保田 聰美(高知県立大学健康長寿センター 特任教授)

 今年3月14日、厚生労働省は「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(関連記事)を発表しました。終末期医療の在り方については、1987年に初めて検討会が開催されて以来、何度も検討会が開催されており、今回のガイドラインは、2007年に策定された「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」の改訂版です。

 ガイドラインの改訂ポイントは、高齢多死社会の進展に伴い、いざという時に本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性を踏まえて、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)を行うことの重要性を強調したこと、そして、介護現場や在宅での看取りが増えることを想定して、ガイドラインの名称に医療だけでなく「ケア」が加わったことだと言えます。

 ACPアドバンス・ケア・プランニング)の定義については、この検討会で幾つかの議論がありましたが、「人生の最終段階の医療・ケアについて、本人が家族等や医療・ケアチームと事前に繰り返し話し合うプロセス」とされ、本人の意思は変化し得るものであることを前提としています。そして、たとえ本人が自らの意思を伝えられない状態になっても、可能な限り「本人にとっての最善の医療・ケアの方針」についての話し合いを繰り返すことが重要であると強調されているのです。

 ただ、こうしたガイドラインが発表されるたびに筆者が危惧するのは、検討会で丁寧に重ねられた議論の流れが置き去りにされ、ガイドライン上の切り取られた文言や概念だけが独り歩きしてしまうことです。実際、2018年度の診療報酬改定においては、同ガイドラインを活用して看取りのための体制を整備することに対して、新たな報酬が新設されています(関連記事)。このガイドラインが、何のために策定されたのかを忘れないためにもまずは、現場で話し合う場をつくることが大切ではないでしょうか。

 実際の医療・介護現場では、人生の最終段階の医療・ケアについて事前に話し合っていても、本人や家族の気持ちが最後まで揺れ動き、決められないケースが多々あります。今回は、現場で起こりがちな具体的な事例をもとに、新ガイドラインがどのような意味を持つのか、考えてみたいと思います。

著者プロフィール

久保田聰美◎くぼたさとみ氏。1986年高知女子大学家政学部看護学科卒。虎ノ門病院、高知県総合保健協会を経て、2004年近森病院に入職。07〜13年同病院看護部長、15年ぺーす代表取締役を経て、現在、高陵病院教育顧問、高知県立大大学院看護学研究科災害看護グローバルリーダー養成プログラム(DNGL)特別研究員。看護学博士。

連載の紹介

はちきんナースの「看護のダイヤを探そう!」
保健師として13年間働いた後、高知県内屈指の急性期病院である近森病院に入職。外来パート勤務を経て病棟師長、看護部長を務め、大学教員、訪問看護ステーション所長など様々な看護のフィールドも経験した筆者が、長年の経験を踏まえて看護の今、そして未来について語ります。看護現場のキラリと光るエピソードを一緒に探しましょう。

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