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ベッドサイドで敗血症を見抜こう!(1)
CRPで敗血症を判断していませんか?

2016/03/15
福家 良太(北摂総合病院呼吸器内科、感染対策室)

 2016年は敗血症sepsis)において重要な年です。2月22日にアメリカ集中治療医学会で敗血症の定義が変更されました。また、国際ガイドラインSurviving Sepsis Campaign Guidelinesの改訂や、私も作成に携わっている日本版重症敗血症診療ガイドライン2016(日本集中治療医学会、日本救急医学会)の発表も控えています(どちらも出版は2017年に入ってからですが)。

 しかし、この敗血症という病気はまだまだ周知されておらず、一般市民の認知度が低いことはもちろん、医療従事者の多くも理解が不十分です。この記事を見ている看護師の方々の中で、敗血症の治療やケアに直接的・積極的にかかわる方は、ごく一部かもしれません。しかし、敗血症患者に出会う方は多いと思います。誰にでも起こりうる疾患であり、日本では敗血症の患者数は年間約40万人、死亡者数は年間10万~20万人と推測されています。

 敗血症患者を救命するために必要なのはできるだけ早期の適切な治療であり、つまりはできるだけ早くその患者が敗血症であることを認識することです。それだけ敗血症という疾患は時間を争います。そして、敗血症を早期に認識するために、医師だけでなく看護師でもできるベッドサイドでの簡単な診断方法があります。

 今回から3回に分けて、敗血症を見逃さないための病態知識、新しい定義と診断基準、初期対応、ガイドラインなどについて概説していきます。

敗血症とはどのような病気?
 敗血症を見逃したことで患者が死亡した事例をめぐっては、2012年に茨城医療過誤訴訟が起こされたことが知られています。この事例では、当直時間帯に患者が来院し、バイタルサインは体温40℃、血圧122/80mmHg、呼吸数36回/分、脈拍166回/分でした。この患者はこの時点では敗血症はなさそうであると判断されてしまい、その2日後に呼吸停止に至り、ようやく敗血症と診断されました。実際には来院したとき既に敗血症をきたしており、さらに播種性血管内凝固症候群(DIC)や急性腎障害(AKI)も合併した重症敗血症の状態でした。

 看護師であれば敗血症という病名を知らない人はいないでしょう。では、どのような病気なのか説明できますか?「CRPが非常に高いので敗血症」や「血液培養で菌を検出した(=菌血症)ので敗血症」という勘違いがよくあります。CRPの高低や血液培養での菌検出の有無は、敗血症の確定や除外の指標にはなりません(ただし、原因菌特定のためにも敗血症では必ず抗菌薬投与前に血液培養2セット採取が必要です)。敗血症かどうか見分けるために、どのような病態であるかを知っておく必要があります。

 敗血症は、これまで「全身症状を伴う感染症、あるいはその疑い」と定義されてきました1)。当然ながら、敗血症の原因は感染症です。多くの場合は細菌感染症ですが、ウイルス、真菌、寄生虫などでも敗血症は生じます。これらの病原微生物による感染症が重篤化すると敗血症になります。なので「敗血症は感染症の重症版」という漠然としたイメージを持っている方は多いと思いますが、その病態は複雑で、少なくともCRPが高いだけで敗血症と考えるのはやめた方がいいです。CRPが20mg/dLを超えるような値でも敗血症でない、あるいはCRPが基準値でも既に敗血症という患者はよくいます。

 通常は、感染症にかかると免疫によって病原体が排除されていき、自然に軽快します。その際に発熱などが生じますが、これも正常な免疫反応の一種です。しかし、細菌量が免疫による許容量を超えてくると、抗菌薬を使っての治療が必要です。抗菌薬が有効に働かなかった場合、細菌量はさらに増加し、毒素などを含む細菌の成分も増加します。

 一方、生体側も細菌を排除するため、サイトカインなどの炎症性物質をより多く放出するようになりますが、これは病原体に対する生体防御反応であると同時に生体にも有害となるものです。この病原体側の増悪因子と生体側の増悪因子が過剰となり、制御不能となったときに敗血症が生じます。この状態になると特に生じてくるのがバイタルサインの大きな変化(特に呼吸数や意識状態)であり、ベッドサイドでも認識できることが多いです。

 抗菌薬の投与は細菌側の増悪因子の減少につながりますが、過剰になった生体側の増悪因子まで同様に減少させるわけではありません。そのため、抗菌薬を投与していても敗血症患者が死亡してしまうことがあります。そこで生まれたのがSIRSという概念です2)。SIRSは全身性炎症反応症候群の略称であり、生体内でサイトカインが過剰になっている状況を指します。従来は、このSIRSが感染症によって起こっている場合に敗血症と定義してきました。

著者プロフィール

ふけ りょうた氏●大阪医科大学卒業後、2009年から北摂総合病院卒後臨床研修医。同病院呼吸器内科、感染対策室を経て、16年から東北医科薬科大学病院感染症内科・感染制御部に所属。日本版重症敗血症診療ガイドライン2016作成メンバー。ブログ「EARLの医学ノート」で医学情報を発信中。

連載の紹介

福家良太の「ベッドサイドで役立つエビデンス」
看護ケアを行う上で、現場にありがちな勘違いや落とし穴など、ベッドサイドですぐに活かせるエビデンスをまとめて発信していきます。日々のケアの見直しや新たな取り組みに活かしていただければと思います。

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