今回からお話しするのは高齢者の肺炎についてです。若年者でも肺炎にはかかりますが、高齢者の肺炎は若年者と比較して非常に複雑かつ様々な社会問題をはらんでいます。エビデンスを踏まえて、以下の通りテーマを複数回に分けて解説していきます。
(1)高齢者肺炎の疫学に見る抗菌薬の限界点
(2)高齢者肺炎の入院・抗菌薬は必要?死亡原因は何?
(3)高齢者肺炎に対する抗菌薬以外の治療・ケア
シリーズタイトルの「高齢者肺炎で入院や抗菌薬治療は必要か」というのは、高齢者肺炎に関しての問題提起を一言にまとめたものです。高齢者肺炎に対する治療は有効なのか、治療することでQOLは改善するのか、単なる延命治療になってはいないか、これらの疑問に対しては明確な答えが出せないかもしれません。しかし、急性期病院、慢性期病院、個人医院(開業医)や診療所、高齢者施設、在宅医療のすべての臨床現場において考えなければならない問題です。本記事を通して現時点で分かっていることを把握し、肺炎を抱えた高齢者に接する際の一助にしてもらうこと、さらに臨床現場から新たな知見が出てくることを願っています。
高齢者肺炎の疫学に見る抗菌薬の限界点
世界で最も権威ある医学雑誌The New England Journal of Medicineに「高度の認知症」というタイトルの論文が掲載されました1)。そこには以下のような症例が提示されています。
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著者プロフィール
ふけ りょうた氏●大阪医科大学卒業後、2009年から北摂総合病院卒後臨床研修医。同病院呼吸器内科、感染対策室を経て、16年から東北医科薬科大学病院感染症内科・感染制御部に所属。日本版重症敗血症診療ガイドライン2016作成メンバー。ブログ「EARLの医学ノート」で医学情報を発信中。

連載の紹介
福家良太の「ベッドサイドで役立つエビデンス」
看護ケアを行う上で、現場にありがちな勘違いや落とし穴など、ベッドサイドですぐに活かせるエビデンスをまとめて発信していきます。日々のケアの見直しや新たな取り組みに活かしていただければと思います。
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