
北谷 真子(天理よろづ相談所病院 内分泌内科 医師)
糖尿病エンパワーメントは、アメリカのミシガン糖尿病リサーチ・トレーニングセンターのRobert Anderson博士と、Martha Funnell看護師らによって提唱された「患者が糖尿病を管理するために、自分の潜在能力を見つけ出し、使用できるように援助する」という糖尿病療養指導における考え方である。
1991年に最初の論文が発表され、日本では、先の2人の著書“The Art of Empowerment”が石井均の監訳により『糖尿病エンパワーメント』として2001年に出版された(参考文献1)。以降、エンパワーメントという言葉はこの10年でまたたく間に糖尿病療養領域で流行語のように広がりを見せた。
しかし、療養指導の現場では、「エンパワーメントの実践とは何か?」を医療者が実感しがたいのが現状だと思われる。ではなぜ、エンパワーメントはその理解や実践が困難なのか。
本稿では、今の糖尿病医療におけるエンパワーメントを実践する上での問題点を考え、当院でどのようにエンパワーメント的な関わりが成長してきたか、経験した一事例も交えながら、チームで実践するエンパワーメントについて考えたいと思う。