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奥が深い!病院との退院調整の舞台裏

2015/05/13
岩本大希(ケアプロ訪問看護ステーション東京)

 昨日、大学病院から訪問依頼の電話がありました。癌の治療中の患者さんで、治療がひと段落したため翌週にいったん退院をしたい、ついては家での生活を支えるため訪問看護を利用したいとの依頼でした。話を聞いたところ訪問診療も併せて導入した方が良さそうだったため、依頼元の大学病院と相談の上、日ごろよく連携している訪問診療専門クリニックへ依頼し、本日、同院のソーシャルワーカーと一緒に大学病院に退院調整へ伺いました。

 退院調整とは、ご本人・ご家族、病院の主治医と担当看護師、在宅医、訪問看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師など関係職種が集まり、これまでの経過や家で継続していくべき治療、必要な処置や物品、サービスを検討し、退院後に家での生活をスムーズに開始するために設けられる会議です。訪問看護師にとっては、在宅での生活を始める前に必要となる準備や退院前にしておいてほしい指導などを、これまでの経過を踏まえて病院スタッフやご家族とすり合わせることができる大変貴重な機会です。

 そもそも、病院での生活は治療や食事、就寝の時間が決まっています。入浴やトイレの際にはスタッフに付き添ってもらえますし、食事も配食されるなど、自宅での生活リズムとは大きな違いがあります。入院していた方の多くは、病院から自宅へ戻ったときに大変大きなギャップを感じます。それを少しでもなくせるように、事前のイメージトレーニングと問題の共有、それに向けた対策を病院スタッフと一緒に考えることが、在宅で迎える側の私たちとしてはとても大事なのです。

中心静脈栄養の投与方法にひと工夫
 今回退院調整に伺った方は、頸部からカテーテルを挿入し中心静脈栄養を行っていました。食事が十分取れないため、1日1000mL程度の点滴栄養は退院後も必要とのこと。病院にいる間は、昼間に数時間かけて点滴していましたが、自宅で日中ずっと点滴しながら動かなければならないのは不便なので、できれは就寝中に点滴したいと本人が希望されていました。それ自体は問題ないのですが、午前中に退院しその日から点滴時間を夜に切り替えてしまうと、前回の点滴から24時間ほど空き、必要な栄養や水分が不足してしまうことが予想されました。そこで病棟看護師と相談し、退院前日の点滴を通常より長い時間かけて行い(約20時間)、退院日の夜に点滴を交換すればいいように調整を図りました。

 また、点滴栄養に薬剤を混注する必要があるのですが、自宅で点滴開始時に本人・家族がそれを行うことは難しいため、必要な薬剤を事前にすべて混合した上で訪問薬剤師に届けてもらうよう手配しました。ただし事前に混注するとなると、薬剤の変性などのリスクがあります。薬剤師へ相談したところ、「冷所保存+専用容器による保管」により最大7日間保管可能とのことで、自宅の冷蔵庫で1週間分の輸液の保管ができるよう調整できました。

 そのほかにも、ご本人あるいはご家族に自分でやっていただく必要がある処置については、どこまでその手技を獲得できているかを病棟看護師に確認してもらい、自宅で行うときに問題になりそうな点の指導を重ねてほしいと依頼しました。さらに、退院日は自宅まで介護タクシーを利用すること、処置などに必要な物品や薬剤は、最初の1週間分は大学病院から処方し、その後は在宅医による処方へ切り替えていくことなども確認しました。

連載の紹介

ケアプロの「訪問看護最前線」
東京都内で訪問看護ステーションを運営するケアプロ。同社の訪問看護師が、日々の看護記録とは別に書きためている「日報」を、コラムに再編しました。家で暮らすことを選んだ人々を支える訪問看護の生々しい現場の様子と、訪問看護師たちの心の動きを綴ります。(ケアプロの運営する新卒・新人訪問看護師応援サイト「CAN-GO!」はこちら

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