日経メディカルAナーシングのロゴ画像

「成長できていない」と悩む新人看護師

2016/01/27
武用 百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)

 新しい一年がスタートしました。今回は、年明けのこの時期に新人看護師に起こりがちな問題と、どうサポートすべきかについて説明していきたいと思います。

2年目になるイメージがわかない
 1月に入り、新人看護師Aさんが「ここに来てしんどくなりました。私、全然成長していないと思うんですが、このまま2年目になって働いていくイメージがつきにくいんです。指導者の方は『もうあなたは大丈夫だから』と言い、なんだか指導をしてもらっている実感がないんです」と相談に来ました。

 話をよく聴くと、勤務シフトは指導者と同じになることがほとんどないようです。勤務はソツなくこなしているようでトラブルもなく、職場の人間関係にも悩んでいるわけではないようです。どのように指導されているのか聞くと、技術チェック表に沿った確認や不足部分をいかにクリアしていくのかについての話し合いがほとんどで、どのような看護をしてきたのか、どのような看護観を育んできたのかに関しては、十分に話し合うことはないようです。

 Aさんも、「自分はこの1年で技術面の成長はしたかもしれないが、看護をしていると思えない」と話しています。「とにかく病棟は忙しいし、先輩たちと話すことも少ない」そうです。

一見問題なく成長しているようにみえるが……
 Aさんはソツなく仕事をこなしており、技術チェック表に沿って見ると一見問題なく成長していると思われます。しかし、「技術の評価が自分の看護の評価ではない」と認識しています。つまり、看護技術はあくまで看護の一部であり、その評価は患者さんの状況へのアセスメントや看護の一連の行為に対する評価ではないと認識しているのでしょう。自分の看護にはどのような意味があったのか、看護師としてどうあるべきかについて十分に吟味する機会を逸してしまっているものと思われます。

 このような状況が続くと、看護師としてのアイデンティティは構築されません。この時期に「Aさんの看護の確立」をしっかりと支えていくことが、2年目以降の看護師としてのアイデンティティの発達に影響していきます。

Aさんへの関わり方は――
 坂村1)は、新人看護師が自立し職業的アイデンティティを育むことにつながった体験として、以下のようなものを挙げています。

・先輩看護師との関係の中で、分からないことを見たり聞いたりし、自分の看護実践を振り返り、学んだ体験
・自分が気づいていない部分を先輩が気づいて補ってくれたり、できていないところやできているところを指摘したり認めてもらったりする体験
・専門職としての看護援助ができた体験
・看護の責任の重さややりがいを感じた体験
・医療チームの一員としての立場を実感できた体験

 Aさんに、これらの体験が少ないと考えられた場合、以下の関わりが必要になります。

(1)指導者(あるいは先輩看護師)と「Aさんは大丈夫」という根拠について十分に話し合う
 Aさんはどちらかというと仕事はできるのだと思われますが、指導者や先輩看護師が思う「Aさんはしっかりと仕事をしているよ。大丈夫だよ」という根拠を本人に丁寧に説明する必要があります。

 指導者や先輩看護師はAさんの看護実践の優れた点に気づいているのですから、Aさんがどのような看護実践をしており、その実践はどのような意味があるのか、また患者さんにどのような効果をもたらしているのか、ひいてはチームにどのような効果があるのかについて、分かりやすく詳細に説明します。

 新人看護師は「自分の看護実践」にまだそこまで客観的になれないものです。この時期に振り返って、「夏まではこうだったけど、今はこのように変化してきた」というように、比較して示すのも一つの方法です。

(2)Aさんが看護観について語る機会を作る
 最近は研修の場であえて「看護を語る機会」を作っている組織が増えているように思います。そうしないと、日々の勤務の中で「看護観」について語る機会がないのでしょう。

 看護師としてのアイデンティティについて、グレッグ2)は自己の看護観の確立、看護価値の認識、仕事の経験からの学びなどが相互作用しながら、看護実践の承認を得てコミットメントし、自己と看護師の統合を図る(看護師のアイデンティティの構築)ことを明らかにしています。看護師のアイデンティティの構築には、まず看護観の確立が重要なのです。その機会を、新卒看護師だけでなく、先輩看護師とともに日々の業務の中で語り合うことが、不消化感を埋めることにつながると思います。

 いきなり自分の看護観について発表させたり、レポートを出させたりするのではなく、日常的にできること、例えば実践した看護を振り返り意味づけを行わせるような方法がよいと思います。ケースカンファレンスにおいて日々の自分たちの看護の意味を見出す作業こそが看護観の形成につながると考えます。

 その作業を新人看護師と共に行うことは、先輩看護師自身の看護師としてのアイデンティティの構築にも反映されるはずです。病棟にこうした取り組みを行う姿勢があれば、そこへ就職、異動してきた看護師はやりがいを感じるでしょう。

著者プロフィール

武用百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)●ぶよう ももこ氏。1991年北里大看護学部卒業。北里大病院、日本赤十字社和歌山医療センターを経て、2000年兵庫県立大大学院修了。和歌山県立医科大附属病院でリエゾンナースとして勤めた後、08年から和歌山県立医大保健看護学部精神看護学講師、15年から現職。

連載の紹介

看護主任・師長のための「職場のメンタルヘルス支援ガイド」
メンタルヘルスに不調を抱えたスタッフを、管理職はどう支援していけばよいのか。一人でも多くの看護師が、辞めずに元気に働き続けられることを願って、リエゾンナースがサポートに必要な知識をお届けします。

この記事を読んでいる人におすすめ