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第9回
「働く意味が見いだせない」ある中堅看護師の悩み

2015/12/09
武用 百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)

 日本看護協会が1995年から毎年実施している「病院における看護職員需給調査」1)を見ると、2013年度の常勤看護師の離職率は11.0%台と横ばいで推移する一方、新人看護師の離職率は7.5%と年々微減傾向にあります。これは2010年より新人看護職員臨床研修の努力義務化が始まり、新人看護職員研修の実施率が高くなったことの成果と考えられています。また、病床規模が大きいほど給与が高く離職が低いことも明らかとなっており、処遇や教育体制の差が離職率に影響していると考えられています。

 では、病院で働く看護職員の負担は軽減しているのでしょうか――。それについて考えていく前に、次の事例を紹介したいと思います。

「組織に大切にされていない」と訴える5年目ナース
 5年目の看護師Aさんは、「自分たちは組織に大切にされていない」「ここで働く意味が見いだせない」と悩み、リエゾンナースに相談に来ました。

 理由を聴くと、来年度もまた新人看護師が入職してくるため、休む間もなく再び教え続けなくてはならない。いつになれば自分が楽に働ける時が来るのかと思うと、ここで働く意味が見いだせず、辞めたいと思っているようです。また、Aさんは「自分の働きを評価されていない」「自分だけいつも仕事を頼まれる」と感じ、ほかの同期と役割上の違いについて不公平感を抱いています。

 前述の通り新人看護職員に対しては、研修の努力義務化や管理職者をはじめ先輩看護師たちの新人看護師のメンタリティを理解した関わりが浸透したこともあり、不適応に移行するケースは減っていると感じます。実際、リエゾンナースとしての活動の中でも、15年前によく見られたいわゆるリアリティショックの症状を呈する新人看護師は明らかに減少しています。

 一方で、新人看護師に直接的指導を行う3~5年目の看護師の疲弊が著しくなっています。その理由は、新人看護師の負荷を減らすために、新人の夜勤やリーダー業務などの導入が遅くなっていることに加え、平均在院日数の短縮化に伴い仕事量が増大していることにあると考えます。当然、中堅以上の看護師が抱える仕事量が増えていることは、容易に推測されます。

 このような背景からも、看護管理者は中堅看護師の離職予防のためにキャリア発達支援を行なう必要があります。

要因は役割の曖昧さとフィードバックの少なさ
 Aさんに起こっていることを考えてみましょう。Aさんは主観的に、「役割と共に仕事量が増えているにもかかわらず、自分だけが仕事を頼まれる」と感じています。また「仕事の評価も公平にされていない」と感じています。その結果、働く意味を見いだせず離職願望を持っています。

 Aさんは役割期待に対する役割遂行能力が高いため、先輩看護師からの仕事の依頼が多いものと考えます。新人看護師教育についてはリーダー的な存在となることを期待されているのでしょうが、それが当たり前となってしまい、オーバーワークとなっていることが考えられます。また役割の曖昧さや役割葛藤(複数の役割を取らなければならない場合に生じるジレンマ)や、Aさんへの仕事に対するフィードバックが少ないために、正当に評価されていないと感じています。

 Aさんに対しては、長期的にキャリア発達できるように支援することが重要です。アセスメントの視点と関わりについて説明していきます。

著者プロフィール

武用百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)●ぶよう ももこ氏。1991年北里大看護学部卒業。北里大病院、日本赤十字社和歌山医療センターを経て、2000年兵庫県立大大学院修了。和歌山県立医科大附属病院でリエゾンナースとして勤めた後、08年から和歌山県立医大保健看護学部精神看護学講師、15年から現職。

連載の紹介

看護主任・師長のための「職場のメンタルヘルス支援ガイド」
メンタルヘルスに不調を抱えたスタッフを、管理職はどう支援していけばよいのか。一人でも多くの看護師が、辞めずに元気に働き続けられることを願って、リエゾンナースがサポートに必要な知識をお届けします。

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