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第7回
“空気が読めない”スタッフとどうかかわる?

2015/10/06
武用 百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)

 「メンタルヘルス支援におけるラインのケア(職場の管理者が実施するケア)」の講義をさせていただく中で、必ず次のような質問があります。

・空気が読めずに患者さんに不快感を与えてしまうため、患者さんの担当が困難である
・「困ったことがあったらいつでも連絡して」と先輩看護師が伝えると、準夜勤終了後の夜中や休日でも連絡してきた
・忙しくて病棟がばたばたしている時、休憩室でお茶を飲んでいた
・先輩看護師が注意をしても反省の色が見えず、すぐに笑いながら同僚と話していた
――このような看護師にどう指導すればよいのか、というものです。今回は、その対応について考えてみたいと思います。

職場の対人関係に悩む新卒ナースのAさん
 新卒看護師の22歳のAさん。入職して6カ月が経ったころ、職場の対人関係に悩み師長に相談してきました。以下のような相談内容でした。

・「仕事で困っていることは同じだろうから、皆で勉強する機会を作ろう」と、Aさんから毎回同僚に働きかけるが、同僚がのってこない。
・先輩看護師が「困ったことがあったら何でも言ってね」と言うから、準夜が終わってから電話をすると叱られた。
・先輩看護師によって指導する内容が異なるので、どのような手順で行えばいいのかさっぱり分からない。B先輩看護師には「こんな簡単なことがどうして分からないんだろうね、変わってるね」と言われ、無視されるようになった。
・ナースステーションにいると先輩たちが怒っているように思うので、ずっと廊下を行ったり来たりしている。ナースステーションには入りにくい。また叱られるので、できるだけ明るく振る舞おうとしている。

 同僚にAさんの状況について聞くと、Aさんは勉強会を皆でしようと声をかけてくるものの、自分の関心がある内容の場合、勉強会の日程を自分の都合に強引に合わせようとするようです。また、自分の関心のない内容の場合には誘いに全く応じないので困っている、ということが語られました。

 ここで、Aさんに起きていることを推測したいと思います。

 Aさんは、「毎回自分が勉強会を企画しているが、同僚がのってこない」と感じています。一方の同僚は、Aさんの関心のあることにだけ強引に誘われると感じています。このようなコミュニケーションの微妙なズレが、様々なところで起こっていると思われます。Aさんも悪気があってしていることではありませんし、本人なりの思いがあって行動しています。それが他者にうまく伝わらずに誤解を招き、先輩看護師たちもAさんを「変わっている人」として扱うので、Aさんも苦しんでいると考えられます。

 また、Aさんは、複数の先輩看護師の教え方がそれぞれ異なることを理解した上で、自分なりのやり方を決められない不器用さがあり、何をしたらよいのかが分からなくなっていると考えられます。それを先輩看護師に説明できず「また叱られる」と、不安が高まっている状態であると考えられます。

自閉スペクトラム症とは
 Aさんは、自閉スペクトラム症の傾向があると考えられます。Aさんへの対応について考える前に、まず自閉スペクトラム症について解説します。

 初めに断っておきますが、この概念を学んでも自閉スペクトラム症の傾向がある看護師に“レッテル”を貼らないでください。“レッテル”を貼ってしまっては、何の進歩もありません。また、自閉スペクトラム症の頻度は人口の1%であることが分かっており1)、それほど珍しいことではありません。今回意図していることは、皆さんに自閉スペクトラム症を正しく理解していただくことです。結果として、その傾向がある看護師に対して適切な指導がなされ、適応しやすくなる看護師が増えることを期待しています。

 自閉スペクトラム症を正しく知り、対応していくことを望みます。

 自閉スペクトラム症とは、DSM-5に含まれる新しい疾患であり、DSM-IVの自閉性障害(自閉症)、アスペルガー障害、小児期崩壊性障害、レット障害などの広汎性発達障害を包括します。自閉スペクトラム症には次のような特徴がみられます。(1)コミュニケーション能力の障害、(2)相手の立場になって物事を考えられないなどの、想像力の障害、(3)他人と関係を作ることが困難であるという点です2)

 働く中で抱えている生き辛さについての調査2)では、以下のことが明らかにされています。

(1)感覚の過敏や鈍麻
 周囲の人や物の動きがすぐに気になり集中できない。あるいは甲高い声が痛く感じるなど
(2)見通しの持ちづらさや変更の苦手さ
 目の前の業務を一つずつ集中して取り組んでいる時に、別の指示が入ると処理しきれずに不安になるなど
(3)周囲の無理解
 自閉スペクトラム症の人たちは、さまざまな言動を無意識にしていることがあるが、それを真似されたり障害者だからといって仕事を与えてもらえなかったりして、嫌な思いをしている人も少なくない
(4)不安、自己肯定感の低さ
 自閉スペクトラム症の人たちは、大人になるまで成功体験が少なく、注意や指摘を受けることも多いので、何かしらの行動をするときに不安を強く抱いている
(5)言語について
 うまく言葉で相談ができない人は、ずっと黙っていたり、質問したくても適切な言葉が出てこない場合は「無理」「したくない」などの答え方をしたりしてしまう
(6)様々な理解の仕方
 ルールは守るものだが、自分なりの解釈によって周囲を困らせてしまうことがある
(7)不器用さ
 不器用さは小さい頃から見られるが、大人になってからも不器用さを持っている人は多い。日常生活の中ではそれほど困らないが、外出や仕事で苦労したり周囲に迷惑をかけたりすることもある

 このような働く中で抱える生活のし辛さは、看護師として働く上で実際にどのような行動で見られ、また、どのように指導していくのがよいのかを考えてみましょう。

著者プロフィール

武用百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)●ぶよう ももこ氏。1991年北里大看護学部卒業。北里大病院、日本赤十字社和歌山医療センターを経て、2000年兵庫県立大大学院修了。和歌山県立医科大附属病院でリエゾンナースとして勤めた後、08年から和歌山県立医大保健看護学部精神看護学講師、15年から現職。

連載の紹介

看護主任・師長のための「職場のメンタルヘルス支援ガイド」
メンタルヘルスに不調を抱えたスタッフを、管理職はどう支援していけばよいのか。一人でも多くの看護師が、辞めずに元気に働き続けられることを願って、リエゾンナースがサポートに必要な知識をお届けします。

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