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第6回
スタッフに暴言を吐く患者にどう対応する?

2015/09/09
武用百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)

 前回は、男性患者から度重なる言葉の暴力を受けた看護師への対応についてお話ししました。今回は加害者への対応を考えてみたいと思います。

「精神的暴力」の加害者への対応の難しさ
 身体的暴力を伴わない、精神的暴力の加害者への対応が難しい理由は、受けた傷が見えないこと(証拠が残らない)と、暴力を受けた本人がそれを自覚していないことにあります。また、陰湿な「精神的暴力」は、新卒看護師や反論できない看護師に向かう傾向があります。そうした暴力に看護師が反論せずにいると、加害者は「自分の言っていることが正しいので何も言えなくなった」と考え、さらに攻撃的になります。暴力で人を支配し、人を支配することで自分の欲求を満たしているのです。
 
加害者への具体的な対応は?
(1)精神的暴力の事実の確認
 精神的暴力を認知した場合、まず加害者に行うことは身体的暴力と同じく事実を確認することです。その際、必ず戦略を立ててから臨みましょう。

◆事実を確認する人
 事実を確認する人は、より利害関係の薄い、より中立の立場にある人(暴力を扱う窓口の職員など)が、最も望ましいと考えます。病棟師長あるいは主治医が一般的でしょうが、患者さんとの利害関係がありますので、必ず中立の立場にある人と一緒に確認することをお勧めします。また、必ず複数で対応し、確認した内容は記録として残します。

◆事実を確認する場所
・プライバシーが守られる、刺激の少ない環境を用意します。部屋にある凶器となるものはあらかじめ出しておきます(ガラス製のもの、置物など)。椅子も人数分とします。患者さんとのパーソナルスペースを十分にとって、個室であればこちらは出口側で対応します。
・患者さんが凶器となるものを所持していなくても、我々が持っているボールペン、はさみなどは時に凶器になります。そのため、身に着けているものは最小限にします。
・事実確認をしている部屋を全てのスタッフに認知してもらい、何かあったときの対応についても確認しておきましょう。

◆事実の確認の仕方
・複数で対応しても威圧的な態度で接してはいけません。また、はじめから患者さんに非があるというニュアンスを伝えてはいけません。淡々と、はっきりと、中庸なトーンで伝えます。
・批判を避けて事実を語ってもらいます。意見を表現し、感情を語れるように急かさずに傾聴します。
・精神的暴力を認知した経緯とその内容の確認の仕方
 「〇〇看護師が通常の業務につけなくなったのでその理由を聞いたところ、あなたに『〇〇〇〇』とか『〇〇〇〇』と言われたことに大変傷付いているようです。そのことについて心当たりはありますか?」「そのように発言した経緯(理由)について教えていただけますか?」などと伝えます。患者さんの不満などは、最後まで聴く必要があります。

◆認知した精神的暴力の内容の伝え方 
 言葉の暴力などの精神的暴力は、受けた傷も見えにくい上、暴力現場を目撃されないこともよくあります。特に精神的な暴力の場合は、日常的に電子カルテに、「日時」「時間」「具体的な暴力の内容(言葉の内容)」「看護師の対応」を必ず残しておく必要があります。周囲の証言も含め特に陰湿な場合は、ICレコーダーに録音しておく、という措置が必要なこともあります。それらの事実を、相手にはっきりと伝えます。

(2)話し合い
 暴力に至った理由がケア提供者の不備によるものであれば、「その旨を改善すること」をはっきりと伝えましょう。まず、こちらが企てる改善策を具体的に伝えます。その際、「こちらの対応であなたに不快な思いをさせたことは申し訳ない」ということは伝えても、不必要な謝罪は要りません。「土下座して謝れ!」と言われることがありますが、応じる必要はありません。そして陰湿な言葉の暴力などにより、看護師が精神的な不調に陥っていることを説明します。暴力はいかなる理由があっても許されないことなので、患者さんが行った具体的な暴力の内容を止めてもらうようにはっきりと伝えます。「『それでも看護師か』とか『看護師失格だ』という言葉は私たちも言われるとつらいので、今後止めてください」といった具合です。

(3)言葉や文書による説明と警告
 「次に暴力行為が起きたときは、法的措置を含め強制退院などを行う」といった警告を示します。

(4)暴力が、症状や病状に起因する場合や特定の看護師が引き金となる場合の対応
 症状や病状の治療を行うことは当然ですが、特定の看護師が引き金となる場合はその看護師には対応させないようにします。

著者プロフィール

武用百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)●ぶよう ももこ氏。1991年北里大看護学部卒業。北里大病院、日本赤十字社和歌山医療センターを経て、2000年兵庫県立大大学院修了。和歌山県立医科大附属病院でリエゾンナースとして勤めた後、08年から和歌山県立医大保健看護学部精神看護学講師、15年から現職。

連載の紹介

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