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第3回
先輩の叱責で出勤できなくなった新人看護師

2015/06/05
武用百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)

 新人看護師が入職して3カ月目に入りました。新人看護師も先輩看護師からの指導を受け、患者さんのケアを少しずつ拡大していく時期になります。今回は、ちょうど今ぐらいの時期に職場で起こった事例をご紹介します。

 Aさんは、希望していた外科系の病棟に配属になった入職3カ月目の新人看護師です。大学卒業後、就職を機に住み慣れた土地を離れ、寮で一人暮らしを始めました。これまで特に問題なく仕事をしていたのですが、ある日、先輩看護師のBさんに、

 「ちょっと!患者さんがAさんに頼んだ薬のことを聞いてきたわよ。どうなっているの!」

と叱られました。さらにBさんは頭が真っ白になったAさんに、

 「本当に、何回言ったら分かるのかな?こないだもこんなことあったよね?私はあなたに患者さんからの苦情を何回言えばいいのかな?」

と問い詰めるように言いました。

 その後もAさんにも聞こえるような声でほかのスタッフに対して、

 「あの子、いつになったらできるようになるのかな。もう指導するのは嫌だ」

と言ったそうです。

 Aさんはその状況の中で泣き出してしまい、同期がそっと声をかけて休憩室に連れて行ってくれたそうです。翌日Aさんは、体調不良を理由に仕事を休みました。その次の日は出勤しましたが、緊張が強いのかインシデントを起こし、別の先輩からも注意される始末。それ以降、仕事に来てもボーッとすることが多く、Bさんが近くにいると固まって動けません。プリセプターへの報告もできなくなり、泣いてばかりいるようになりました。

 見かねた師長からリエゾンナースに依頼がありました。

Aさんに起こっていること
 Aさんは先輩のBさんに叱責され、ほかのスタッフの前で自身への指導が嫌であることを公言された状態です。この一連の出来事がきっかけとなり(ストレッサー)、不安が高まり過緊張状態になっていると思われます。その結果、Bさんがいると動けなくなり、仕事に来ても注意力・判断力が低下しているのでインシデントを起こしているものと考えられます(ストレス反応)。

 Aさんのようなスタッフは、自分が看護師失格であると自信を失い、この先指導をしてもらえないのではないかという不安を持っています。スタッフ全員が自分のことを「できない新人看護師」と思っていると考え、孤立していると感じています。また、自宅での様子を聴いても「翌日が日勤だと思うと眠れない」「食事がとれない」「頭痛や吐き気がする」「その先輩看護師のことが頭から離れない」といったことが語られます。このような思いがあると、その病棟に適応していくのは非常に困難となります。

Aさんにはどう対応する?
 孤立していると感じる状況が長く続くと、その病棟ではほぼ働けません。まず、Aさんがサポートされていると実感することが重要です。すぐに話を聴く手配をします。その際、気を付けなくてはならないのは、「この場で聴くことは決して口外しない」と伝えることです。また、片方から話を聴く場合、中立の立場で聴くことも重要です。話したくないことは無理に話さなくてもよいことも伝えましょう。Aさんには、

 ・どのような出来事をきっかけと思い、どのような気持ちになっているのか
 ・食事、睡眠などのセルフケアは維持できているのか

を中心に話を聴きます。

 また、以下の反応がある場合には、業務調整、勤務調整が必要となります。

 ◇自制できない身体症状がある(吐気、嘔吐、激しい胃痛や腹痛、下痢、過換気発作など)
 ◇著しい睡眠障害
 ◇著しい食欲低下
 ◇職場で感情のコントロールができずによく泣いている
 ◇抑うつ気分が強く、気分転換ができていない

 特に、自制できない身体症状や著しい睡眠障害がある場合は、さらなる精神症状の悪化を招きます。そのため、改善するまでは休ませる方がよいと考えます。

著者プロフィール

武用百子(和歌山県立医大保健看護学部精神看護学准教授、精神看護専門看護師)●ぶよう ももこ氏。1991年北里大看護学部卒業。北里大病院、日本赤十字社和歌山医療センターを経て、2000年兵庫県立大大学院修了。和歌山県立医科大附属病院でリエゾンナースとして勤めた後、08年から和歌山県立医大保健看護学部精神看護学講師、15年から現職。

連載の紹介

看護主任・師長のための「職場のメンタルヘルス支援ガイド」
メンタルヘルスに不調を抱えたスタッフを、管理職はどう支援していけばよいのか。一人でも多くの看護師が、辞めずに元気に働き続けられることを願って、リエゾンナースがサポートに必要な知識をお届けします。

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