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【最終回】
皮膚疾患の俗説に惑わされるな

2018/03/29
安部 正敏(札幌皮膚科クリニック、褥瘡・創傷治癒研究所)

 長らく続いた本連載も今回が最後である。何事にも始まりがあれば終わりがある。

 あの、長きにわたり親しまれた「笑っていいとも!」も数年前に終了し、大きなニュースとなったが、これは同番組が国民的人気を博していたからである。その陰で始まってはすぐ終わるテレビ番組は数知れず、例えば1976年に放送開始の「円盤戦争バンキッド」などわずか半年で終了した。この番組の名前を聞いてピンとくる読者はほとんどいないものと思われるが、子供向けの戦隊モノであり、斯様なヒーローモノは当時から鉄板ネタであったため、半年で打ち切りになるなど尋常ではないのであるが、このドラマの主人公を演じた人こそ奥田瑛二氏である。そう考えると本連載は24回をもって終了するのであるから、長らく皆様に愛されてきた証であり、一度でも読んでいただいた方々には心から御礼を申し上げたい。

 さて、最終回に何を記そうかと思ったが、最後は、今後の我が国を担う若年者に好発する皮膚疾患について取り上げてみたい。幼児期から思春期において発症する皮膚疾患は少なくない。一般市民でも典型的な症状であれば診断可能な皮膚疾患には俗称がつけられており、いわゆる「とびひ」「いぼ」「みずぼうそう」「にきび」「あせも」など枚挙に暇がない。

 ただ、皮膚科医を生業にしていると、これら疾患がいかに正しく理解されていないかを痛感することも多い。自己判断なら本人の責任であるからまだしも、患児は幼少であるが故に、周囲が誤って判断した結果、かなり症状が悪化して初めて医療機関を受診するケースがある。

 一昔前の話だが、ある児童は顔面に小型の白色の皮疹が出現した。今の若い読者には分からぬであろうがこの症状は「はたけ」と称され、この皮疹を主訴に医療機関を受診することなど珍しいことであった。その児童は、養護教諭からこの「はたけ」を指摘され、「これはカビの感染であり、しっかり顔を洗わぬためである!」と満座の面前で恥をかかされた。児は一念発起し、何とかこの症状を消退させようと、朝晩に加え、学校でも熱心に石鹸を使って顔を洗浄した。

 しかし、あろうことかその症状は軽快するどころか増悪し、養護教諭から「あれほど言ったのに、ちゃんと顔を洗いなさい!」と激高される有様であった。実はこの「はたけ」が皮膚表在性真菌感染症であるということは嘘っ八であり、正式名称は「顔面単純性粃糠疹」と称し、基礎疾患としてアトピー性皮膚炎や皮脂欠乏性湿疹などが存在する。恐らく、この児童は石鹸を使用し頻回に顔面を洗浄していたため、ドライスキンが強調され、皮疹が出現したのであろう。

 この例は極端ではあるものの事実であり、患児はなんと筆者自身である。ちなみに、その養護教諭は看護師資格をもつものの、ナイチンゲール誓詞など全く知らぬような心優しくなき女性であり、児童から「鬼婆」などと呼ばれていたが、その失態を記すと際限がないのでここまでとする。

ヒルドイドをほしがる患者たち
 極端な例を記したが、やはり成人のみならず未成年における皮膚疾患も、正しい診断と正しい治療が必須であることは言うまでもない。皮膚疾患の俗称と都市伝説的なその俗説を信じて自ら対処すると、一番の被害者は患児となる。皮膚疾患が生じた際に受診すべきは当然皮膚科専門医である。無論、小児科医を受診するのでもよく、皮膚希少疾患や光線療法など皮膚科特有の治療を必要とする場合には、ちゃんと紹介してもらえるであろう。

 最近世間で問題となったのが保湿薬を美容液代わりに使用している現状である。あろうことか、芸能人がSNSにシミ、シワ、ソバカスなどに効果があるなんぞと記載したため「高額な美容クリームより効果がある」との噂が拡散し、化粧品を購入する感覚で病院を訪れ、乾燥肌などと訴えて保湿薬の処方を受けることが問題となった。

著者プロフィール

安部正敏(医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック副院長、褥瘡・創傷治癒研究所)●あべ まさとし氏。1993年群馬大学医学部卒。同大皮膚科入局。米テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員、群馬大皮膚科講師などを経て、2013年から現職。近年エッセー連載も多数。

連載の紹介

安部正敏の「肌と皮膚の隅で」
看護師が日常的に遭遇する皮膚疾患をテーマに、病態のメカニズムや治療の最新知見、スキンケアのピットフォールなどを解説するエッセー。看護師向けセミナーや書籍などで大人気の安部正敏医師が、分かりやすくレクチャーします。

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