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学べる看護師の不安な一夜

2017/07/20
安部 正敏(札幌皮膚科クリニック、褥瘡・創傷治癒研究所)

 看護師の衰えぬ学習意欲には本当に頭が下がる思いである。過日行われた第26回日本創傷オストミー失禁管理学会にも、大勢の勉強熱心な看護師が集い、熱心な討論が行われた。中でも、皮膚・排泄ケア認定看護師が展開する専門外来のシンポジウムは興味深かった。

 近年、認定看護師を中心とした専門外来を設ける急性期病院が増えている。フットケアやリンパ浮腫の外来などを、目にする機会も多い。患者からのニーズが高い領域であり、患者サービスとしては当然歓迎されるべきものである。さらに一歩進んで、意欲の高い看護師が自ら独立して看護サービスを提供するケースも出てきた。看護師のスキルアップにもなる上、社会に対して看護師の能力をアピールする意味でも特筆すべきことであろう。

 シンポジウムでは、皮膚・排泄ケア認定看護師だからこそできる、創傷ケアの取り組みが発表された。創傷を扱う上で看護師自ら手術場に入り、一貫して患者ケアを行うのだが、ここで素晴らしいと感じたのは決して皮膚・排泄ケア認定看護師のスキルのみを強調するのではなく、絶えず医師や同僚看護師とコミュニケーションを密にするような働きかけを行いながらケアを行っている点。集学的治療の実践により患者の治癒促進につながっていると感じた。

看護師の活躍、経営面で貢献できない課題も
 しかし、物事は多面的に見なければならぬ。シンポジウムでは医師側より、「専門性の高い看護師によりトータルの医療レベルが向上する」という視点が述べられた一方、「看護師の医療サービスはあくまで医師の指示が必要であり、患者からのニーズがあるからといってサービスを拡大しても、診療報酬上は、加算が算定できる程度であり、母体となる医療機関においては経営面で貢献できない」という点が指摘され、興味深かった。無論、後者の意見は看護師の活動を否定しているのではなく、あくまで勤務先の医療機関の経営面からのニーズを間違えないようにしなければならないという慧眼なのである。

 無論、斯様な立派な講演をする医師は筆者であろうはずもなく、感銘を受けながらも、その後の情報交換会に出席した。当然筆者の活躍の場はこちらであり、美酒に酔い、医療とは全く関係のない話題に花が咲いた。当然、医療の話題などこれっぽっちもせず、お得意の鉄道の話なんぞばかりしていたので、恐らく周囲の看護師の皆様は役立たぬ皮膚科医と思っていたであろう。

 翌日は仙台で日本皮膚科学会総会がある。一応、皮膚科医の端くれである筆者は、講演と会議出席のため早朝に出発せねばならず、後ろ髪を引かれる思いで会場を後にし、ホテルに向かった。さて、明日も早いからと入浴しようとしたところ事件は起こったのである。

 突然、部屋が停電し非常灯が点灯した。無論、斯様なアクシデントぐらいで筆者は驚かぬ。しかし、それに続いて館内に放送が流れた。「火事です。火事が発生しました」。一大事である!幸い入浴前であった。すぐさま手荷物をまとめ廊下に出た。果たして薄暗い廊下には不安そうな女性が多数部屋から顔を出している。学会参加者なのであろう。

 フロントに問い合わせると「火災ではないので、心配はない」などと言うが、ビル火災の始まりは斯様な誤報から始まるのであろう。映画「タワーリングインフェルノ」が走馬燈のように思い出され、さらには若い読者にはわからぬであろうが、ホテルニュージャパン火災のニュースが蘇ってきた。

著者プロフィール

安部正敏(医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック副院長、褥瘡・創傷治癒研究所)●あべ まさとし氏。1993年群馬大学医学部卒。同大皮膚科入局。米テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員、群馬大皮膚科講師などを経て、2013年から現職。近年エッセー連載も多数。

連載の紹介

安部正敏の「肌と皮膚の隅で」
看護師が日常的に遭遇する皮膚疾患をテーマに、病態のメカニズムや治療の最新知見、スキンケアのピットフォールなどを解説するエッセー。看護師向けセミナーや書籍などで大人気の安部正敏医師が、分かりやすくレクチャーします。

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