日経メディカルAナーシングのロゴ画像

ハンドクリームで不倫は見破れる?

2017/01/27
安部 正敏(札幌皮膚科クリニック、褥瘡・創傷治癒研究所)

 「使用しているハンドクリームが同じであることから不倫がバレた!」――。ウソかホントか分からぬニュースがネット上に書かれている。某テレビ局のアナウンサー同志の不倫報道の続報のようである。

 米国のトランプ大統領就任により世界がどう変わるか混沌としている現在において、おおよそどうでもいいような内容であるが、ハンドクリームなんぞと書かれると皮膚科医としては一瞥(いちべつ)せぬ訳にもいかぬ。さらに、斯様なエッセイなんぞを連載する立場であれば、そこら中にネタ探しの電波を出さねばならず、一応読んでみなければならぬ。

 その記事によると、不倫していた男女は同じハンドクリームを使用していた。テレビに手も映ってしまうのでアナウンサーにはハンドクリームが必需品であるが、この2人は同じものを使用していた…そうである。恐らく、海外製の高価な、知る人ぞ知るハンドクリームであったのであろうが、そもそも筆者のようなヤブ医者であればいざ知らず、どんな名皮膚科医であったとしても、塗った後に、使用している市販のハンドクリームの種類をズバリ当てるなど不可能に近く、Mr.マリックに任せるべきであろう。

 当然、使用していたハンドクリームの容器などで判断するのであろうが、とすれば皮膚科診療においてハンドクリームとしても使用可能な保険適用の保湿薬は数が限られており、皮膚科に通うあまねく男女は不倫を疑われることとなる。筆者も医療用保湿薬として用いられる外用薬を愛用しているが、それならば絶世の美女と不倫を疑われたいものである。そこらのおっさんとあらぬ疑惑をもたれてしまっては末代までの恥である。

手荒れにはハンドクリームのこまめな塗布を
 どうでもいい話題はさておき、誰しも一度は経験するであろう手荒れ。その予防はハンドクリームをこまめに使用することに尽きる。

 皮膚科外来には手湿疹として、かなり重症の方もおいでになる。当然水仕事などが増悪因子となるため職業をお伺いするが、やはり美容師の方が圧倒的に多く、大変な職業である。誰しも髪を切る際にお世話になる職種であり、最近は男性も美容室に出入りするので、その激務を目の当たりにするであろう。素手で洗髪し、毛染めを行わねばならないため、手湿疹は職業病ともいえる。日本のキメ細かなサービスは、斯様な苦労の上に成り立っているのである。

 一方で、最近は不景気を反映してか町中に1000円カットなどが多数出現している。そのような店は一人当たりのカット時間が少なく、さらに洗髪も行わぬため、美容師や理容師の手荒れも起こりにくいであろう。この手の店舗形態は一昔前は存在しなかったが、米国などから日本に入ってきたようである。

 米国と言えば、筆者が米国留学した際、英語もロクに喋れぬ中で特に困ったのが整髪であった。そもそも英語で髪型をどのように頼めばよいのやらさっぱり分からぬ。思案していると、地元の日本人向けのフリーペーパーに日本人が在籍している美容院があるという。

 「いつでもミヨコに日本語でお気軽にお電話を!」なんぞと記載されているので、真に受けて電話をしてみたところ、ミヨコが電話口に現れたものの何を言っているのかさっぱり分からぬ。しかし、英語でもなさそうであり、どうも懐かしい日本語の響きを漂わせているものの要領を得ない。結局何も分からぬので電話を切り、「さては俺様も英語がネイティブ並みになり日本語を忘れたか?」と悦に入ったが、知人の日本人によると、このミヨコは既にかなりの高齢女性であるらしく、要は日本語すら話せぬというのが真相であるらしい。

 それでも、他の美容院を探したり、若い現地スタッフと英語で会話するのが面倒なせいか、ミヨコのいる美容院は現地日本人でけっこう賑わっているようであった。他方筆者は、同僚のアメリカ人の男に理容院を聞いた。すると彼は「俺はいつもスーパーカットに行っている。チェーン店で安心だ。10ドルで済むので、チップを含めて11ドル渡せば、後は勝手に切ってくれるよ」などと言う。どうもあれこれ髪型を指示しなくても良いようであり、まさに筆者にうってつけである。値段も今の1000円カットとほぼ同じである。

著者プロフィール

安部正敏(医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック副院長、褥瘡・創傷治癒研究所)●あべ まさとし氏。1993年群馬大学医学部卒。同大皮膚科入局。米テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員、群馬大皮膚科講師などを経て、2013年から現職。近年エッセー連載も多数。

連載の紹介

安部正敏の「肌と皮膚の隅で」
看護師が日常的に遭遇する皮膚疾患をテーマに、病態のメカニズムや治療の最新知見、スキンケアのピットフォールなどを解説するエッセー。看護師向けセミナーや書籍などで大人気の安部正敏医師が、分かりやすくレクチャーします。

この記事を読んでいる人におすすめ