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看護セミナーでよく受ける質問は?

2016/10/24
安部 正敏(札幌皮膚科クリニック、褥瘡・創傷治癒研究所)

 看護師向けの講演の仕事は楽しい。その仕事の種類によっても楽しみは様々である。

 看護師主体の日本創傷・オストミー・失禁管理学会では、学術大会でしばしばランチョンセミナーの講師のご依頼を頂く。ランチョンセミナーというのは、学術大会のお昼時、企業がスポンサーとなって開催される講演であり、通常お弁当が供される。昼食難民を出さないきわめて有難い存在である。

 時に、企業セミナーを小馬鹿にする参加者を見かけるが、そのおかげで学会参加費も高額にならぬわけであり、感謝こそすれ文句を言うなど言語道断である。嫌であれば出なければいいのだ。看護師主体の学会は、皮膚科医主体の学会と比較して参加者が格段に多い。そのランチョンセミナーで、一番大きな会場を担当させていただくとそれは壮観である。

 例えば、以前行ったある会社のランチョンセミナーは定員が実に800名。すでに事前予約で売切れ満席である。学会に参加している看護師は極めて勉強熱心であり、インターネットで参加登録が開始されるや否や、ランチョンセミナーなどどんどん売切れとなってしまう。著者も、自らのセミナーの売れ行きをみながら一喜一憂するのであるが、売り上げが好調に推移するとさすがに嬉しい。他に先駆けて遂に売切れになると、気持ちだけは人気アーティストになったようで痛快である。

 ただ、気が付いてみると自分の分のチケットを予約しておらず、「売切れ」を理由にセミナーに現れなければぼろ儲けである。しかし、限りなく低い責任感を有する著者もさすがに当日はノコノコ現れた。チケットはないが演者であるので当たり前のごとく顔パスで入場が可能である。

 果たして、登壇すると、そこには800人がこちらを向いてお弁当を食べる光景が待っていた。しかも、看護師主体のセミナーであるので若い女性が多い。この光景は壮観で、なかなか経験することができぬ。

セミナー後のクイズで成績優秀なら豪華賞品も
 講演をする際には、毎回多少なりともプレッシャーがかかるものであるが、ある意味一番プレッシャーなのは有料セミナーであろう。

 著者は、数年前より学研メディカル秀潤社の「学研ナーシングセミナー」の講師を務めている。最初に依頼されたのは、「皮膚のすべて」というセミナーであった。当初は2日間かけてセミナーは行われ、初日が著者、2日目が皮膚排泄ケア認定看護師と異なる視点から解説するセミナーであった。このセミナーは有難いことに存外の好評を得、それから派生するがごとく、著者単独担当の「外用療法」をテーマにしたセミナーが開始された。

 現在では、「皮膚のすべて」「スキンケア」「外来療法」の3本立てで、セミナーを担当している。

 我がセミナーはすべてにおいて、レクチャー終了後“遊び”の時間を設けており、参加者全員で確認クイズを行っている。成績優秀者にはとっておきの商品がプレゼントされるのであるが、学研メディカル秀潤社の努力は素晴らしく、最近では最も高額な商品は参加費をはるかに上回る事態が続いており、それを得た場合、セミナーに参加しお釣りがくるのである。さらに、著者が関係企業に直接お願いして試供品などをご提供いただき、参加者全員にもれなく進呈しており、これも人気の秘密であろう。

 この様な噂が漏れ伝わったのか、実は同業他社からもセミナー開催の依頼が少なくない。ただし、その企画は学研ナーシングセミナーのパクリのような内容であることが多く、オリジナリティーがない。しかも、大会場に大人数を詰め込む計画であり、利潤追求がありあり見える。

 そもそも学研メディカル秀潤社には、参加者から安からぬ参加料を頂く以上、以下の点をお願いしており、同社はこれを快諾していることでセミナーの質を担保していると自負している。

 (1)まず、会場定員は最大でも200名程度とすること。これは、参加されたすべての方が講師に気軽に質問できるようにするためには、この程度の人数が限界だと思うためである。(2)会場内では著者と気軽に対話できる環境を作ること。すなわち、コンサートの大ホールのように高い位置に舞台があるような会場ではなく、聴講者と講師の間に壁が出来ない様にすること。(3)セミナーのテーマや内容は演者任せにせず、会社とともに作り上げること。主催者側は毎回参加者のアンケートを取ってニーズを把握している。有料セミナーこそ顧客満足度を重視すべきであるとの著者なりの信念である。    

 このような有料セミナーで、一度だけ大ピンチがあった。特に原因はないのであるが、講演前日からなんだか体調が悪い。大好きな新幹線に乗車している間も気分が優れず、めまいまでする有様である。何とか這う這うの体で前泊するホテルにたどり着いたが、体調悪化は進むばかりである。

 体調不良のための当日のドタキャンなど、山下達郎のような大御所のライブであればファンも納得しようが、著者ではそうはいかない。結局、翌日飲まず食わずで丸1日のレクチャーをこなし、事なきを得たのであった。武道館などでライブを行うサザンなど、そのプレッシャーはいかばかりかと思う。

著者プロフィール

安部正敏(医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック副院長、褥瘡・創傷治癒研究所)●あべ まさとし氏。1993年群馬大学医学部卒。同大皮膚科入局。米テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員、群馬大皮膚科講師などを経て、2013年から現職。近年エッセー連載も多数。

連載の紹介

安部正敏の「肌と皮膚の隅で」
看護師が日常的に遭遇する皮膚疾患をテーマに、病態のメカニズムや治療の最新知見、スキンケアのピットフォールなどを解説するエッセー。看護師向けセミナーや書籍などで大人気の安部正敏医師が、分かりやすくレクチャーします。

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