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“感動ポルノ”と皮膚疾患

2016/09/15
安部 正敏(札幌皮膚科クリニック、褥瘡・創傷治癒研究所)

 前回の連載で、パソコンのwindows10へのアップグレードに失敗した話をしたが、その後日談があり、つまるところパソコンは使用不能となってしまった。著者はフンガイのあまり発売元のカスタマーサポートに電話をしたところ「windows10へのアップグレードに関してはマイクロソフトへ……」との案内が流れた。なるほど。windows10へのアップグレードなんぞ、発売元には関係のないことであり、著者は電話をかけなおした。

 果たして電話口に男が現れた。「 windows10へのアップグレードに失敗したのちのパソコンの動きが遅く、文字が横長になり、毎度「彩りの設定をせよ」の文字が出てくる!」と話すと、極めて恐縮しながらこちらから遠隔操作で修理するなんぞと言われた。

 言われた通りパスワードを入れると驚くべし、自宅のパソコンがどこにいるか分からぬオペレーターの男により操作され始めた。なるほど、こんな操作ができるならネットバンキングのハッキングなどたやすいものであろうと妙に納得する。しかし、プロの腕にかかればアッという間に直るであろうと思いきや、なんと2時間かかっても直らぬ。果てには「彩りの設定」はマイクロソフトの範疇ではないため、発売会社に電話せよとのことであった。なるほど、外資の会社が「彩」なとどいう優美な用語を使うはずもなく、改めて内資系である販売会社に電話をする。

 すると恐るべきことに著者のパソコン自体がwindows10へのアップグレード対象外であるというではないか!しかし、現実何度となく勝手に「windows10へのアップグレード」が案内され、推奨されていたのは事実である。狐に抓まれた思いで聞いてみると、著者の機種はアップグレード対応されていないが、windows7を使用しているだけで画面にはアップグレードを推奨する案内は出るとのことで、要はそれにまんまと乗ってしまうと大変なことになる図式なのであった。
 
 著者はフンガイし、この怒りをどこにぶつけようかと思ったが、おそらく敵もさるもの免責事項などに書いてあるに違いなく、泣く泣く泣き寝入りである。「 無料windows10アップグレード」なる偽善的なお誘いについ乗ってしまった罰であるのかもしれない。

難しい「健常者」の定義
 偽善といえば、最近“感動ポルノ”なる用語が話題となっている。毎年夏に民放が行うチャリティー番組になんとNHKが噛みついたらしい。著者は、このチャリティー番組は偽善的に思えて大嫌いであり、当然視聴することはない。そもそも、出演者は高額なギャラを得ているようであり、またマラソンなどチャリティーとは無縁の企画に関しても理解できぬ。

 本来、テレビ局のチャリティーであれば、通常の番組を流した上で視聴率が上がった分を寄付するとか、極端な話、24時間コマーシャルを流し続け、視聴者がそれを見ることでそのCM料を寄付するなど、いくらでも方法はある。日頃はバラエティー番組オンパレードの放送局が掌を返したがごとく、障害者一辺倒の内容で視聴率を得る行為は“感動ポルノ”と批判されても仕方ないのかもしれない。

 そもそも障害者の頑張りを見て感動するのは、障害者を多少なりとも憐みの目でみているからに他ならない。それ自体が健常人の不遜なところであり、差別の発端である。また、この健常人の定義は、医療従事者であればなかなか難しいことを実感しているはずである。皮膚科医であれば、いろいろな皮膚先天異常疾患を経験する。

 色素性乾皮症と呼ばれる皮膚疾患は、生まれつきの光線過敏症であり、適切に対処しなければ高頻度に皮膚癌を発症する。一般的に紫外線は皮膚の細胞に作用してDNA 損傷を与えるが、本症はそれを修復する機能に異常がある疾患である。さらに一部の患者では、進行性神経症状を併発し予後不良である。症状には、重症から軽症まで様々なタイプがあるが、紫外線を浴びないことが治療法であり、患者は屋内生活を余儀なくされるか、外出の時はそれこそシールドをまとうような完全防備が求められる。

 ガーゴイリズムと呼ばれる疾患は、顔面の特徴として、大きな頭および顔面、濃い眉毛、鞍鼻、口唇の肥厚がみられ、「怪奇顔貌」などとひどい名称で呼ばれる。本症は真皮の細胞外基質の構成成分であるグリコサミノグリカンを分解するリソソーム酵素活性が低下もしくは欠損する結果、結合組織中にグリコサミノグリカンが蓄積して生ずるものである。

 ウェルナー症候群と呼ばれる疾患は、皮膚萎縮に伴い鼻が細く尖り、口唇が菲薄化することで、鳥に似た顔貌を呈する。「鳥様願貌」などと呼ばれる。この他、本症では早期から白髪、白内障もみられる。本症患者は出生時から思春期まではほぼ正常に生育するが、思春期における成長がみられないため低身長、低体重を来す。

著者プロフィール

安部正敏(医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック副院長、褥瘡・創傷治癒研究所)●あべ まさとし氏。1993年群馬大学医学部卒。同大皮膚科入局。米テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員、群馬大皮膚科講師などを経て、2013年から現職。近年エッセー連載も多数。

連載の紹介

安部正敏の「肌と皮膚の隅で」
看護師が日常的に遭遇する皮膚疾患をテーマに、病態のメカニズムや治療の最新知見、スキンケアのピットフォールなどを解説するエッセー。看護師向けセミナーや書籍などで大人気の安部正敏医師が、分かりやすくレクチャーします。

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