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シミはヨクイニンでとれる?とれない?

2016/06/29
安部 正敏(札幌皮膚科クリニック、褥瘡・創傷治癒研究所)

 誠によくない傾向である。シミを消したいという患者が少なくない。「そんなこと皮膚科では当たり前ではないか?」と言われそうであるが、その患者たちの訴えが以前と異なるのである。

 以前は、レーザー治療や美白剤の希望が多かったのであるが、最近内服薬を欲する患者が増えた。無論、炎症後色素沈着に対する内服療法は皮膚科で行うため不思議ではないと思われようが、患者が薬剤を指定してくるのである。「ヨクイニンをくれ」と……。

 ここまででピンと来た方も多いと思うが、最近ヨクイニンがにわかに脚光を浴びている。ヨクイニンなんぞ、はるか昔から存在する薬剤であり、何ら目新しいことはない。それが最近患者の眼に止まるのは、テレビCMによるところが大きいようである。著者もある朝、「元都知事はクレヨンしんちゃんだけでなく、ドラえもんも購入したのではないか」とだしぬけに思いつき、最新情報をチェックしようとテレビをつけたところ、驚くべきCMを目撃する羽目となった。

 「○○さんのシミ、実はイボだったのです」などとニュース風に喋る男が現れ、この薬を飲むとイボが消え、さも肌が綺麗になるという内容である。皮膚科医の端くれである著者は、驚きのあまり、テレビに見入ってしまった。どうりで最近、ヨクイニンの処方を希望するシミの患者が増えたのである。

シミは隆起するとイボに似るのだが…
 近年テレビの視聴率は振るわず、若者のテレビ離れも叫ばれているが、それでも電波の影響は大きい。

 そもそも、医学的にヨクイニンはシミには効果がない。シミは正式には「老人性色素斑」と呼ぶ。しかし、シミは何も高齢者だけの病気ではないので、甚だこの病名はよろしくない。海外では「日光黒子」と呼ばれる場合があり、その方がよほどすっきりしている。この病態は、紫外線により表皮が癌化するのを防ぐべく、表皮に存在する色素細胞(メラノサイト)がメラニンを産生し、周囲の表皮細胞にメラニンを供給するためである。

 シミは、いわば生体の防御機能であり、本来はありがたいものなのである。しかし、無論著者は患者に対し、さようなことを親鸞の如く諭すような愚行を犯すはずもなく、さらに「老人性色素斑」などみのもんたが絶対に使わぬ用語を避け、患者に説明する。

著者プロフィール

安部正敏(医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック副院長、褥瘡・創傷治癒研究所)●あべ まさとし氏。1993年群馬大学医学部卒。同大皮膚科入局。米テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員、群馬大皮膚科講師などを経て、2013年から現職。近年エッセー連載も多数。

連載の紹介

安部正敏の「肌と皮膚の隅で」
看護師が日常的に遭遇する皮膚疾患をテーマに、病態のメカニズムや治療の最新知見、スキンケアのピットフォールなどを解説するエッセー。看護師向けセミナーや書籍などで大人気の安部正敏医師が、分かりやすくレクチャーします。

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