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誰のための保湿薬?

2015/10/28
安部 正敏(札幌皮膚科クリニック)

 前回、ドライスキンについて記載し、その対処法に関しては「気が向けば…」と書いて終わりにした。何と無責任な男であろうか! と読者にはあきれられるかもしれぬが、そもそも本稿は医学記事ではなくあくまでエッセーという体裁である。

 このエッセーを執筆するにあたって、「気が向く」とはとても重要な事である。無論、「執筆意欲が湧かない」とか「今は執筆すべき時期ではない」などといった大作家のごとき理由ではなく、他に書きたいテーマが現れるためである。

 皮膚科学という学問体系は、強固な理論をもつ科学なのであるが、一般市民にも特に美容的見地から様々な不確かな情報が流れ、結果として皮膚科学の誤解を生む。

 例えば、シミを消したいという患者を前に、内服薬は確実に効果をもたらすのではなく、患者ごとに異なること、その効果は内服してみなければわからぬことをとうとうと説くが、「だったら先生!通販で買います。シミを消す薬剤が結構出ているけど、一応病院に行ってみようかと思って来たのだれけどがっかりです!」などとあらぬことを言われ、「通販で売っているシミ消しは、『アナタのため』ではなく『母のため』に作られたようだが…」などと言いかえす気力もなく撃沈する有様である(この発言の意図がわからぬ方は、ぜひもう一度前回の記事をお読み下さい)。

 では市販されているシミ消しにはすごい成分が含まれているのかと思いきや、成分をみると、医療用と似通ったものである。広告が可能な一般用医薬品の強みである。ちなみにネット時代とは恐ろしいもので「シミに悩む母のために作った」という浪花節的な美談も、神よ!悪魔よ! ネット上では「単なるマザコン」などと叩かれており、一筋縄ではいかぬものである。

 実は、今回シミ患者の出現で、遂に本連載タイトル「肌と皮膚の隅で」の意味するところを記載したくなったのであるが、今回は編集部よりドライスキンの対処法を書かれたし! という指示が飛んでおり、またまた著者の意に反して書くことができぬ。

著者プロフィール

安部正敏(医療法人廣仁会札幌皮膚科クリニック副院長、褥瘡・創傷治癒研究所)●あべ まさとし氏。1993年群馬大学医学部卒。同大皮膚科入局。米テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員、群馬大皮膚科講師などを経て、2013年から現職。近年エッセー連載も多数。

連載の紹介

安部正敏の「肌と皮膚の隅で」
看護師が日常的に遭遇する皮膚疾患をテーマに、病態のメカニズムや治療の最新知見、スキンケアのピットフォールなどを解説するエッセー。看護師向けセミナーや書籍などで大人気の安部正敏医師が、分かりやすくレクチャーします。

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