日経メディカルのロゴ画像

第47回 主訴: 指定なし
入院後に肝障害と電解質異常が著明に悪化した、るい痩を認める52歳女性
竹内靖博(虎の門病院)

2013/02/20

虎の門病院 竹内靖博先生

【症例】 52歳 女性 保険会社管理職

【主訴】 特になし

【受診目的】 股関節障害のため通院中に著しい肝障害を指摘され紹介受診

【既往歴】
先天性股関節脱臼による開脚制限と疼痛(整形外科通院中)、50歳より橋本病による甲状腺機能低下症のためレボチロキシン 50μg/日内服中。NSAIDは常用せず、症状の強いときのみ内服(PPIを併用)。

【家族歴】 特記事項なし

【生活歴】 飲酒:機会飲酒、喫煙:なし 子供2人、50歳時に閉経。

【現病歴】
・先天性股関節脱臼のため整形外科通院中であった。股関節痛や開脚障害の進行あり、手術を勧められていたが、仕事などの都合で希望されず。症状緩和のために体重を45kg以下とするように指示され、41-2kg程度を維持していた。
・職場の異動など生活環境の変化から食習慣が乱れ、体重が4カ月で10kg減ってしまった。特段の消化器症状はなく、レボチロキシン内服により甲状腺機能は適切に維持されていた。
・2カ月前の外来受診時にAST 50 IU/L、ALT 45 IU/Lと軽度の上昇を指摘され経過観察となっていた。
・その後の検査で、AST 622 IU/L、ALT 471 IU/Lと著しい悪化を認め、また体重が31kgとるいそうを認めるため、精査・加療目的に消化器内科に緊急入院となった。

【身体所見】
身長 156.5cm、体重 30.9kg、BMI 12.6、意識清明(インテリジェンス高く、意思疎通良好)、体温 36.3℃、血圧 105/68 mmHg、脈拍数 41/分 不整なし
頭頸部:眼瞼結膜貧血なし、眼球結膜黄疸なし、頸部リンパ節触知せず、びまん性甲状腺腫大あり (150%)
胸部:心雑音なし 呼吸音 清、ラ音聴取せず
腹部:平坦・軟、圧痛なし、肝脾腫なし、腸雑音正常
四肢:両足背に浮腫
神経:特記事項なし

【入院時検査データ】
<血算>
WBC 2.8 x1000/μL、RBC 3.95 x100万/μL、Hb12 g/dL、Hct33.8 %、Plt 159 x1000/μL、
<生化学>
総蛋白 5.7 g/dL、Alb 3.3 g/dL、CK 877 IU/L、AST 293 IU/L、ALT 291 IU/L、LDH 523 IU/L、ALP 389 IU/L、γGTP 63 IU/L、T-Bil 1.5 mg/dL、アミラーゼ 132 IU/L、BUN 33 mg/dL、
Cr 0.5 mg/dL、eGFR 100.7 ml/分/1.73、UA 4 mg/dL、TG 17 mg/dL、T-cho 205 mg/dL、
HDL 117 mg/dL、LDL 49 mg/dL、Na 137 mmol/L、K 3.9 mmol/L、Cl 101 mmol/L、
Ca 8.3 mg/dL、P 3.0 mg/dL、CRP 0.1 mg/dL

肝炎ウイルス検査:すべて陰性

<内分泌>
TSH 2.04 μIU/mL、F-T3 1.24 pg/mL、F-T4 1.30 ng/dL

単純X線像:特記事項なし
心電図:洞性序脈
腹部超音波検査:脂肪肝
腹部CT検査:著しい脂肪肝
消化管内視鏡検査:上部・下部ともに特記すべき病変無し

【入院後経過】
・スクリーニング検査では悪性疾患やウイルス性肝炎の可能性は乏しく、栄養障害の改善が必要と考えられた。経口摂取は膵臓食半量 (650 kCal/日)とし、維持輸液500 ml/日を並行して実施した。
・入院後、4日目から血清P値の低下を認め、7日目からは血清K値の低下とAST/ALTの更なる上昇を認めた。電解質の補正を輸液により行った。
・入院10日目にAST/ALTは2000台となった。この時点で浮腫を認め、胸部X線像では胸水の貯留も認められた。病態の再評価と治療方針の検討が必要となった。


著者プロフィール

MedPeer(メドピア)●日経メディカル Onlineとメドピア(株)が共同運営する医師向けコミュニティーサイト。著名臨床研修指定病院との連携によるオンライン症例検討、薬剤に関する口コミ評価、各種のアンケートなどを実施。

連載の紹介

MedPeer ケース・カンファレンス
医師が医師のために運営する日本最大の医師限定掲示板「MedPeer」では、会員医師がネット上で自由に参加できる症例検討会を実施中(iCC;インタラクティブ・ケース・カンファレンス)。その中から興味深い症例をピックアップして紹介します。

この記事を読んでいる人におすすめ