◎飯塚病院 宮崎岳大先生
【患者】 65歳 女性
【主訴】 吐血、下血
【現病歴】
肝機能障害を指摘されていたが、定期的に病院へ通院していないADL自立した65歳女性。
入院当日、昼頃までは特に普段と変わったことはなかったが、12時頃嘔吐し、吐物に血液が混入していた。その後、トイレで大量の暗赤色の下血を認めたため救急車を要請し当院へ緊急搬送された。
来院時、意識状態GCS-E3V5M6、血圧50/30mmHg、HR90bpm、体温34.1℃、SpO2:100%(Mask2L)であった。直腸診にて新鮮血を認め、胃管からの吸引では、コーヒー様残渣の内容物あり。血液検査でHgb:6.0mg/dLと著明な貧血を認め、上部消化管出血による出血性ショックを考え、MAP 6単位、FFP15単位、細胞外液2500ml輸液した。
消化器内科にコンサルトし、上部消化管内視鏡検査を施行した。食道静脈瘤の所見を認めるも活動性の出血は認めなかった。出血源精査のために、腹部造影CTを施行したが造影剤の漏出は認めなかった。下部消化管出血の可能性も考え、下部消化管内視鏡検査を施行したが大腸に明らかな出血性病変を認めなかった。回腸部から新たな血液の流入を認めた為、出血源は小腸と判断し、緊急血管造影を施行した。血管造影では腹腔動脈、上腸間膜動脈に血管造影を行ったが、明らかな出血点はなく、この時点で血圧も安定してきたため、血管造影を中止した。
【Review of systems】
鼻汁(-)、喀痰/咳嗽(-)、腹痛(-)、腹部膨満感(-)、嘔気/嘔吐(+)、四肢冷感(+)、吐血(+)、下血(+)
最近の食欲・排泄・睡眠・体重変化(-)
【既往歴】
肝機能障害(5年前)、骨粗鬆症(2年前)、腰椎圧迫骨折(2年前)
輸血歴(-)、HTN(-)、DM(-)、心疾患(-)、腎疾患(-)
【薬剤歴】
フォサマック35mg1T1X、ディーアルファ1X
【社会歴】
[ADL]自立 [家族構成]独居 [飲酒]2本/日×10年 [喫煙]なし
【アレルギー歴】 薬(-)、食物(-)
【家族歴】 肝疾患(-)
【ER受診時の身体所見】
[全身状態]不良 、身長:150cm、体重:55kg
[意識状態]GCS-E3V5M6
[Vital signs] 血圧50/30mmHg、HR90bpm、体温34.1℃、SpO2:100%(Mask2L)
[頭部]眼結膜(黄染-貧血+出血斑-)、瞳孔:3/3mm、不同-、対光反射:+/+
[口腔]義歯+、乾燥-
[肺]呼吸音: 清、wheeze(-)、crackle(-)
[心臓]心音:I→II→III-IV-、心雑音-
[腹部]平坦軟、腸蠕動:正常、手術痕-、圧痛-
[四肢]チアノーゼ-、浮腫-、関節腫脹-
[皮膚]くも状血管腫-、手掌紅斑-、皮疹/紫斑-
[直腸診]新鮮血+、Mass-
【ER受診時の検査所見】
[血液検査]
<血算>WBC 6570、 RBC 222 万 、 Hgb 6.0g/dL、 HCT 19.8 %、 MCV 89.4 μ3、 MCH 29.8 Pg、 MCHC 33.4 g/dL、 RDW 14.0、 PLT 6.0 万 、 Neut 82.1 % 、 Lymp 9.7 %、 Mono 6.3 %、 Eos 0.2 %、 Baso 0.1 %
<生化学>AST25 U/L、 ALT12 U/L、 LDH 152 U/L、 ALP 136 U/L、 γGTP 42 U/L、 T-Bil 0.8 mg/dL、 Alb 2.2 g/dL 、 BUN 19 mg/dL、 CRE 0.6 mg/dL、 Na 136 mEq/L 、 K 3.7 mEq/L、 CL 110 mEq/L 、 Ca 6.7 mg/dL 、 Glu 123 mg/dL、 CRP 0.15 mg/dL、 総蛋白 4.2 g/dL
<凝固>PT% 62.0 % 、 APTT 30.4 S、 標準血漿値 31.0 S、 PT-INR 1.27 、 PT比 1.34
<2年前の血液検査>
Hb:12.1、Plt:7.2、AST:45、ALT:16、LDH:276、ALP:386、γ-GTP:90、T-bil:0.9
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著者プロフィール
MedPeer(メドピア)●日経メディカル Onlineとメドピア(株)が共同運営する医師向けコミュニティーサイト。著名臨床研修指定病院との連携によるオンライン症例検討、薬剤に関する口コミ評価、各種のアンケートなどを実施。

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