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自己注射製剤「空打ちは初めだけ」の意味は?

2013/09/10

<処方箋の具体的内容は>

60歳代の女性
<処方1> 病院内科
フォルテオ皮下注キット 600μg  1キット
1日1回

<何が起こりましたか?>

・「初めだけ」という言葉を勘違いして、患者は自己注射製剤のフォルテオ皮下注キット<テリパラチド(遺伝子組換え)>の初回導入時以来、空打ちを行っていなかった。

<どのような過程で起こりましたか?>

・患者は骨粗鬆症で以前に骨折の経験があったため、4か月ほど前より骨粗鬆症治療薬のフォルテオ皮下注キット<テリパラチド(遺伝子組換え)>(ヒト副甲状腺ホルモン[1-34]製剤)を処方していた。
・今回受診時にフォルテオ皮下注キットを問題なく使用できているかたずねたところ、特に困っていることはないということであった。
・続いて、注射針を毎回交換しているか、新しいキットを使いはじめる際に空打ちしているか、冷所保管しているかなど、基本事項の再確認を行ったところ、初回導入時以降空打ちを行っていなかったことが判明した。

<どのような状態になりましたか>

・空気を抜いたり、ちゃんと薬液が出ることを確認するため、28日に1回のペンの交換日には必ず空打ちを行うよう患者に説明した。
・幸い、これまでに空打ちを行わなかったことによる有害事象や効果の減弱は認められていなかった。

<なぜ起こったのでしょうか?>

・初回導入時、患者は病院の看護師からフォルテオ皮下注の使用法の指導を受けていた。看護師からは、「空打ちは初めだけ!」「今日空打ちするので、もうこれからはしなくていい!」と強調されたとのことだった。
・フォルテオ皮下注は、新しいキットを使いはじめる時に1回だけ空打ちを行う必要があるが、患者は看護師の「初めだけ」という言葉を、「キットを使いはじめる前」ではなく、「フォルテオ皮下注の導入時だけ」と受け取っていた。看護師は、おそらく「キット(ペン)交換日の始めだけ」と伝えたかったが、看護師と患者間で「初めだけ」という言葉の解釈にズレが生じていたと考えられる。

<二度と起こさないためには今後どうしますか?>

・本事例のように自己注射製剤の使用経験が長い患者でも、勘違いして覚えていたり、忘れていたりすることがあるため、定期的に使用法の確認を行う。
・自己注射製剤(皮下注射製剤)では、製剤によって空打ちを行う必要がある。キットの使いはじめのみ実施するものや(フォルテオ皮下注など)、使用時に毎回実施するもの(インスリン製剤など)など、実施タイミングが異なる製剤が存在するため、指導時には空打ちのタイミングを間違えないように気をつける。
・また、「使い始めだけ」という表現では、導入時と交換時のどちらにも解釈できてしまうので、「新しいペン(キット)の使い始めだけ」などと明確に伝えるようにする。

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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