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インスリン注射剤の変色・混濁

2013/08/13

<処方箋の具体的内容は>

40歳代の男性
<処方1> 病院内科
ノボラピッド30ミックス注フレックスペン 2本
1日2回 朝10単位 夕12単位

<何が起こりましたか?>

・1型糖尿病で長年インスリンを使用していた患者から、処方した1週間後に、「インスリンが変色しているが、大丈夫か?換えてもらえるか?」との訴えがあった。

<どのような過程で起こりましたか?>

・患者は1型糖尿病であり、インスリンの使用歴は20年ほどだった。現時点で合併症はなく、インスリン製剤のみを処方していた(<処方1>)。
・前回の診察から1週間後、患者が再度来院し、「インスリンが変色しているが、大丈夫か?交換は可能か?」と訴えた。さらに患者は「自分は長い間インスリン治療をしてきたが、変色は今回が初めてだ。自分の手技に落ち度はないはずだ」と述べた。
・患者に処方していたのは懸濁インスリン製剤であるが、患者が持参した製剤を確認したところ、乳白色の固まりが肉眼で認められた。

<どのような状態になりましたか>

・インスリン製剤を再処方することにし、患者が持参した製剤は回収して、製薬企業に製剤の変色について調査を依頼した。2週間後、変色の原因は逆血(インスリンカートリッジ内に血液が逆流すること)であると判明した。
・この調査結果と逆血について患者に説明したところ、患者は納得していた。

<なぜ起こったのでしょうか?>

・逆血が起こる原因としては以下の3つのケースが考えられるが、注射手技について患者から詳細に聴取して検討したところ、(3)のケースの疑いがあると考えられた。
(1)注入後、注射針を抜く前に注入ボタンを離してしまった。
注入後に注射針が刺さった状態でカートリッジ内の圧力が低くなった場合、血液がカートリッジ内に逆流してしまう。
(2)注射針が血管に到達してしまって血液を吸い込んだ。
(3)注入部位を強くつまみすぎてしまった。
・患者は、インスリン使用歴が長く(糖尿病歴、20年程度)、さらに現在処方しているノボラピッドは他の医療機関にて長期に使用していたとのことから、当院では手技の確認を初回に簡単に行ったのみであった。従って、本剤の使用方法は全く問題ないと判断してしまった。

<二度と起こさないためには今後どうしますか?>

・最大10秒くらいは押したままにするよう指導する。
・注射針が血管に到達して血液を吸い込んだり、注入部位を強くつままないよう、ときどき手技の確認を行う。
・もしもカートリッジ内に異物があった場合は、使用しないように指導する。(但し、逆血に関しては、残りが少ない場合、緊急の場合はそのまま使用して差し支えないと指導する医療機関もある)。
・患者への服薬指導例を以下に示す。
「インスリンの使用歴が長いということですが、何かトラブルとかありませんか?逆血などもありませんか?これまでそのような経験はないのですね。しかし、機器もどんどん新しくなるので確認だけはしておきましょう。注入した後に針を抜く前に注入ボタンを離してしまったり、針が血管に到達してしまったり、注入部位を強くつまみすぎてしまったりすると、逆血を起こすことがあります。逆血となった場合には直ぐに知らせてください。」

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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