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ウブレチドの減量は何のため?

2012/10/09

<処方せんの具体的内容は>

70歳代 男性
<処方1> 内科
ウブレチド錠 5mg 1錠
1日1回 朝食後
14日分

<何が起こりましたか?>

・生活保護を受けている患者が、ウブレチド <ジスチグミン> の減量を医療費削減のためと思い込み、不満を持っていた。

<どのような過程で起こりましたか?>

・患者は高齢で生活保護を受けており、排尿困難の治療のためウブレチド錠5mg <ジスチグミン> を1回1錠、1日2回の用法で処方していた。
・2010年3月にジスチグミンの添付文書が改訂になり、排尿困難に対する用法・用量が変更になった。従来は成人に対し、1日5~20mgであったが、投与量が多いほど重篤な副作用であるコリン作動性クリーゼが起こる可能性が高まるため、添付文書上の排尿困難に対する用法用量が、1日1回5mgのみになった。
・添付文書の改訂にあわせ、前回の処方から、ウブレチドの1日量を10mgから5mg(1回5mg、1日1回)に変更した。
・患者の症状は安定しており、用量以外の変更はなかったため、用量の変更について詳しく説明せずに「いつもの排尿しやすくする薬を出しておきます」と説明を行った。
・今回の診察時に患者から「なんで薬が減っていたのか」と尋ねられたが、詳しく聞くと患者は「自分が生活保護を受けているから医療費削減のために薬を減らされた。嫌がらせだ!」と思い込んでいたことが分かった。

<どのような状態になりましたか>

・ジスチグミンの添付文書上の用法・用量が変更になったことと、その経緯を説明し、それにあわせて処方量を減らしたことを説明した。
・患者は説明を聞き「そういうことなら納得した」と述べ、誤解を解くことができた。
・患者は処方薬が減量された理由を誤解し、不満を持っていたが、処方通り服用していたため、幸い排尿困難の悪化や副作用はみられなかった。

<なぜ起こったのでしょうか?>

・ジスチグミンの処方量は 1日10mgから5mgへの変更であり、排尿障害に対する効果は大きく変わらないと考えられること(特記事項を参照)、用法用量が変更になったことを説明すると変更の背景や妥当性についても説明しなければならず時間がかかること、用法自体については薬局で改めて説明があるだろうと思っていたことなどから、処方量の変更について患者に細かく説明しなくても問題ないと判断してしまった。
・患者は生活保護を受けていることを気にしており、ジスチグミンの減量についても生活保護と結び付けて考え、嫌がらせをされたと思ってしまったと考えられる。
※ 1984 年の再評価申請時の情報に基づき有効性を検討した結果、ウブレチドの全投与量での有効性は、「有効」以上が 62.7%、「やや有効」以上が 72.0% であったのに対し、5 mg 投与でも「有効」以上が 60.3%、「やや有効」以上が 68.9% であり、1 日 5 mg でも他の用量と有効性はあまり変わらないことが示されている[文献 1)]。

<二度と起こさないためには今後どうしますか?>

・処方量を変更する際には、添付文書の改訂にあわせた変更や、効果や安全性に対する影響が小さい変更でも、患者に理由を説明する。
・患者によっては、処方量の変更を不満に思ったり不安になったりすることがあるため、説明を省略しないようにする。
<参考文献>
1) ウブレチド錠 5 mg 添付文書等改訂のお知らせ, 鳥居薬品, 2010.03.

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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