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食事制限せずインスリンを自分で増量した患者

2012/08/16

<処方せんの具体的内容は>

50歳代男性
<処方 1> クリニックの内科
ノボリン30R注フレックスペン
7本(朝:20単位-昼:20単位-夕:20単位)
 他剤省略
 

<何が起こりましたか?>

・ノボリン30R注フレックスペン<ヒト二相性イソフェンインスリン製剤>を使用している糖尿病患者が、普段の食事を我慢したくないために、インスリンを食事の量に応じて処方量より大幅に多く打っていた。

<どのような過程で起こりましたか?>

・患者は、混合型インスリン製剤のノボリン30R注フレックスペンと経口血糖降下薬で血糖値をコントロールしていた。
・ノボリン30Rは食事ごとに1日3回20単位ずつ処方していたが、今回受診時に使用状況を尋ねたところ、患者は「重い食事の時は30単位ほど打っていて、たまに低血糖が起きるが、おかしいと感じたらすぐに糖分を摂るから大丈夫」と回答。これまでの治療で食事制限をあまりせず、インスリンを処方量より多く打って自己調節していたことが分かった。
・また、インスリンを多く使用することに関して、患者から「低血糖さえなければインスリンをたくさん使用しても大丈夫か?」と質問も受けた。

<どのような状態になりましたか?どう対応しましたか?>

・幸運にも重大な結果には至っていないが、インスリン使用後に何度か低血糖症状が発生しており、インスリンの投与量調節(過度な増量)が低血糖の一因である可能性がある。現在のインスリン使用方法を続けた場合、重篤な低血糖が発生する恐れがある。
・患者のHbA1c(JDS)は6%台で、血糖コントロールは不良ではないが、改善が必要な値であった。患者のインスリン投与量の自己調節(過度な増減)が血糖コントロールを悪化させる要因となっていた可能性がある。
・食事制限を行わずにインスリンを増やすと体重増加につながることや、血中インスリン濃度が高いと低血糖以外にも動脈硬化や高血圧、心血管疾患などの一因になることを説明した。食事制限をなるべく行い、当面の間はインスリンの投与量の自己調節は行わず、様子を見るよう指導した。

<なぜ起こったのでしょうか?>

・患者は低血糖については注意を払っていたが、食事制限の重要性やインスリンを慢性的に多量に使用することの悪影響を十分に認識しておらず、食事制限をせずともインスリンの投与量を増やせば問題ないと考えていた。
・患者はインスリンの投与量を増やした際の低血糖に対し、糖分を摂って最低限の対処はできていたが、重篤な低血糖が起こる可能性もあり、低血糖リスクを軽視しすぎている傾向があった。

<二度と起こさないために今後どうするか?>

・患者に食事制限の重要性を丁寧に説明するともに、食事制限をせずにインスリンの投与量を増やすことは低血糖の危険性以外にも、動脈硬化などのリスクを高める可能性があるため、推奨できないことを説明しておく。
・インスリンの投与量の自己調節はQOLの観点などから必要な場合もあるが、調節方法は事前に医師と相談して決めておくこと、不都合があれば相談するよう説明する。
・低血糖を繰り返すと、重篤な状況になるまで気付きにくくなる(無自覚性低血糖症)など、非常に危険である(低血糖に気づかないうちに先に意識障害や痙攣などの重症低血糖に陥る危険がある)ことを指導しておく。また、糖尿病治療による低血糖の出現については、必ず医師に報告するよう指導する。

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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