<処方せんの具体的内容は>
80 代の女性
<処方 1> 病院の内科
イーシー・ドパール配合錠
6錠
1日3回
毎食後
14日分
ケタスカプセル10mg
3Cap
1日3回
毎食後
14日分
マグミット錠330mg
4.5錠
1日3回
毎食後
14日分
※イーシー・ドパールは粉砕、ケタスは脱カプセル、マグミットは別包とする。
<何が起こりましたか?>
・施設の介護士が、別包指示のマグミット<酸化マグネシウム製剤>を<処方1>の他の薬剤と一緒に溶かして長期に患者に投与していた結果、薬剤同士で配合変化が起こり、胃ろうチューブが茶色に変化した。
<どのような過程で起こりましたか?>
・患者は認知症とパーキンソン病の既往があり、特別養護老人ホームに入所中で、胃ろうチューブから投薬されている。
・胃ろうによる投薬開始から約2カ月後、入所施設の介護士から「胃ろうチューブがだんだん茶色になってきた。薬が着色の原因ではないか」との連絡があった。
<どのような状態(結果)になりましたか>
・そこで、薬剤部に確認したところ、マグミットとイーシー・ドパール配合錠<レボドパ・ベンセラジド塩酸塩配合剤>は配合変化(レボドパが酸化マグネシウムによって酸化分解し、メラニン(黒褐色)を生じる)を起こす可能性があったので、マグミットは別包にしていたということだった。
・薬剤師が、介護士に投与方法について確認したところ、施設では分けて投薬するのが面倒だったので、別包になっていたマグミットを含め、3剤を混合して一緒に投与していたことが判明した。介護士にマグミットはイーシー・ドパール配合錠と一緒に投与すると、配合変化を起こすので、別に投与する必要があること、そのため別包となっていたことを再度、薬剤師から説明してもらった。
<なぜ起こったのでしょうか?>
・わざわざ別包にしていた薬剤が、胃ろうからの投与時に手間がかかるという理由から、混合して投与される可能性を想定していなかった。
<二度と起こさないために今後どうするか?>
・この事例のような介護施設などに限らず、家庭においても誰によって投薬されるかは重要な問題であり、実際に投薬する者にも投与方法を十分に説明する必要がある。服用時点が同じでも、特段の理由から別包にしている場合には、その理由を十分に説明する必要がある。
・薬剤師に対して、服用方法について、説明書を渡す、薬袋・分包紙に「この薬を他の薬と混ぜないで下さい」のような注意文を印字するなど、患者に注意の喚起をお願いする。
<その他特記すべきこと>
・イーシー・ドパール配合錠インタビューフォームには「アルカリ性薬剤との配合により、着色変化を起こすことがあるのでアルカリ性薬剤との配合は避けるべきである」との記載がある[文献1)]。
着色のメカニズムを以下に示す。レボドパおよびメチルドパは、酸化マグネシウムのようなアルカリ性薬物により酸化分解し、メラニン(黒褐色)を生じることが報告されている(図1)[文献2)]。図から、レボドパの含量も減少すると推察される。