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白内障手術後にもかかわらずカタリンKの処方を希望していた患者

2010/06/29

<処方せんの具体的内容は>

80代女性
<処方1> 当院(内科クリニック)
=内服薬(高血圧治療薬など)省略=
カタリンK点眼用0.005%(15 mL)  2本  1日3回 両目点眼

<何が起こったか?>

・当院内科クリニックからカタリンK<ピレノキシン>を処方していた高齢患者が、実は病院の眼科で白内障の手術を受けていたことが判明した。

<どのような過程で起こりましたか?>

・患者は、足が悪くなかなか眼科に行けないとのことで、以前から当院よりカタリンK点眼用を処方していた。
・ある時、点眼がうまくできているかの確認を行ったところ、実は少し前に眼科で白内障の手術を受けていたことがわかった。
・患者によると、また白内障になったら困ると不安に思い、ずっとカタリンKの点眼を続けていたとのことだった。

<どのような状態(結果)になりましたか?>

・患者には、カタリンK点眼液はそのような目的での使用には適していないことを丁寧に説明し、カタリンKの処方を中止した。患者は納得していたようだった。

<なぜ起こったか?>

・診察時、高血圧の治療の状況や症状については話すものの、眼科での治療状況についての確認は不十分であった。
・患者は内科の病気を診てもらっているのに、眼科の受診状況について内科クリニックの医師に話す必要はない(話しづらい)と感じていた可能性もある。

<二度と起こさないために今後どうするか?>

・やむを得ず、他院や他診療科の薬を処方する際には、患者やその主治医と、コミュニケーションをとって治療の状況などを把握するようにつとめる。
・白内障にかぎらず、手術の前後で処方薬が不要になる場合があることに留意する。

<その他特記すべきこと>

・ピレノキシンの作用機序:白内障の成因は水晶体の水溶性蛋白が、有核アミノ酸(トリプトファン、チロシンなど) の代謝異常で生じるキノイド物質によって変性し不溶性化するためといわれている。ピレノキシンはキノイド物質のこの作用を競合的に阻害して、水晶体の透明性を維持させることにより白内障の進行を抑制すると考えられている。ピレノキシン点眼液の効能効果は初期老人性白内障である。
・白内障手術では、水晶体を摘出して、人工の水晶体である眼内レンズを挿入する。したがって、白内障手術後にピレノキシンを点眼する有効性は認められないと考えられる。
・白内障手術後は、眼内レンズが挿入されているので、水晶体が濁ると言う意味での白内障の再発はないが、眼内レンズ挿入時に残される水晶体の袋(水晶体嚢)が濁る「後発白内障」が惹起されることがある。しかし、ピレノキシンが後発白内障に有効であるというエビデンスはない。また、後発白内障は発症した場合、レーザーによる治療で回復する。

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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