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PPIで下痢が起こった!

2010/05/25

1.処方の具体的内容は?

70歳代の女性
<処方1>病院の腎臓内科
ザイロリック錠100(100mg)
1錠
1日1回
朝食後
28日分
レニベース錠5(5mg)
1錠
1日1回
朝食後
28日分
ワーファリン錠1mg
3錠
1日1回
朝食後
28日分
ワーファリン錠0.5mg
1錠
1日1回
朝食後
28日分
コニール錠4(4mg)
2錠
1日2回
朝夕食後
28日分
ディオバン錠40mg
2錠
1日2回
朝夕食後
28日分
ペルサンチン錠100mg
3錠
1日3回
毎食後
28日分
プレドニン錠5mg
1錠
1日1回
朝食後(隔日)
14日分
フォサマック錠35mg
1錠
1日1回
起床時(週1回)
4日分
タケプロンOD錠15(15mg)
1錠
1日1回
朝食後
28日分
※ワーファリン錠、フォサマック錠、タケプロンOD錠は入院中またはそれ以降の外来通院時に追加された。

2.何が起こりましたか?

・患者から下痢の訴えがあったが、原因を特定できずにいた。しかし3カ月半後、タケプロンOD錠<ランソプラゾール>の服用を中止したところ下痢の症状は見られなくなった。

3.どのような過程で起こりましたか?

・患者は足の腫れを訴えしばらく入院し、退院後は<処方1>を処方していた。
・患者は<処方1>を服用開始3週間後、下痢を訴えて受診した。
・当初、入院中に開始したワーファリン錠<ワルファリンカリウム>が下痢の原因と考え、ワーファリン錠の服薬中止及び抗菌薬や整腸剤の投与の措置をとったが、下痢は改善されなかった。
・患者はその後も1カ月毎に受診していたが、タケプロンOD錠を被疑薬としなかったため、原因がわからないまま、約3カ月半下痢が続いていた。

4.どのような状態(結果)になりましたか?

・約3カ月半後の受診時、タケプロンOD錠の服薬を中止したところ、下痢がピタッと止まったと患者から報告を受けた。このことから、下痢の原因薬剤はランソプラゾールであった可能性が考えられた。

5.なぜ起こったのでしょうか?

・本症例では実際にタケプロンOD錠投与後に下痢が生じ、中止後はその症状がみられなくなった。この経過などから、有害事象と被疑薬物の因果関係を評価する指標である Naranjo adverse drug reaction (ADR) probability scale [文献 1)] を用いて、本症例における下痢とタケプロン服用との関係を評価したところ、確実な因果関係は認められないが、可能性は否定できない (possible,+4) とされた (Naranjo rating では、因果関係が強い順に definite、probable、possible、doubtful の 4段階に分類される)。
・ランソプラゾールによって下痢の副作用が起こる可能性(<その他特記すべきことは?>参照)について認識していなかった。プロトンポンプ阻害薬(PPI)で下痢が起こるとは考えなかったため、ランソプラゾールを原因薬剤として疑わなかった。

6.二度と起こさないために、今後どう対応しますか?

・患者から副作用の訴えがあった場合は、どのような症状がいつごろから出ているか、副作用発症時に薬などの追加や変更はないかなどを確認し、可能性がある薬剤をすべてピックアップする。
・思い込みや類薬のイメージなどで副作用の被疑薬かどうか判断をくだすことは避け、調査したデータに基づいて判断する。

連載の紹介

医師のための薬の時間
薬物治療に関するヒヤリ・ハット事例や薬物相互作用に関する情報を毎週提供しているNPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンター「医師のための薬の時間」(東京大学大学院薬学系研究科の教員が運営)。その内容の一部をご紹介します。
*印は医薬品ライフタイムマネジメントセンターのWebサイトにあり、記事にリンクしています。

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