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【症例報告】私が経験した新型インフルエンザ
患児が突如、呼吸不全に陥り肝冷やす

2009/09/01
森こどもクリニック(東京都文京区)院長 森蘭子氏

 私は都内の小児科開業医です。今年6月からこれまでに疑い例を含む20人以上の新型インフルエンザの症例を経験していますが、中には重篤な状態に陥ったケースもあり、その経過には本当にヒヤリとさせられました。

軽度の喘息のある10歳男児、3カ月前に上気道炎
 患者は10歳の男児です。もともと喘息(日本小児アレルギー学会のガイドラインでいえば軽症持続型)があり、以前から当院に通院していました。

 肺炎で2歳と5歳の時に、2度の入院歴があります。乳幼児のころ、上気道感染症罹患時には軽度の喘鳴を認め、その度に抗ロイコトリエン拮抗薬にて軽快していました。最近来院したのは、今年の5月下旬。その時は上気道炎で、呼気終末に狭窄音を聴取しました。気管支拡張薬の吸入でピークフロー値の改善があったため、喘息症状ありと判断して、吸入ステロイドなどの治療を開始しました。ところが、1週間ほどで症状が改善したので、自己判断で治療を中止していたとのことです。

映画を見に行った2日後に高度の発熱
 「朝から少し咳があって、熱が高いんです…」。そう言って患児と保護者は、8月上旬のある日、夕方6時20分ごろ来院しました。周りには新型インフルエンザの流行はなかったそうですが、受診の2日前に父親と繁華街に映画を見に行ったとのことでした。

 来院する2時間前、午後4時ごろに保護者が体温を測ってみると39.7℃。咳は出ていたものの、比較的元気だったそうです。ただ、念のためということで当院を受診しました。受診時の全身状態は良好で、胸部聴診でも異常はありませんでした。発熱して間もないので、インフルエンザの迅速検査はせず、高熱が続くようなら翌日も受診するよう指示し、帰宅させました。

 翌日の午前中、患児は再びやってきました。前の日の夜は38.1~39.2℃と高熱が続き、咳がひどくなっていったそうです。食事は取れなかったものの水分は取るようにしていて、尿量が少なめでした。受診時の体温は、38.9℃。ぐったりしていましたが、受け答えは問題なくできており、その場でインフルエンザ迅速検査を施行しました。

 ここまでは外来でよくあるやり取りですが、この後で患児の容態は思いもよらないほど急激に悪化したのです。

診察を待つ30分間で急変
 迅速検査の結果はA型陽性。結果が出てから診察するまで、患者には隔離室で30分ほど待ってもらっていました。そして再び診察するために隔離室に行ったところ、患者はぐったりして全く言葉を発しないのです。

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