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2008. 3. 19

再灌流障害

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脳血管

 脳梗塞急性期における治療戦略の原則は、迅速な血流再開と脳細胞保護にある。特に、t-PA静注療法の時代に突入した現在、この治療戦略の重要性がさらに大きく浮上してきた。そうした中で問題となるのが、血流再開による脳の虚血再灌流障害(脳浮腫増強、出血性梗塞など)である。

 再灌流障害には、エネルギー代謝障害によるグルタミン酸をはじめとした興奮性アミノ酸の放出、細胞内へのカルシウム流入、活性酸素(スーパーオキサイド、ハイドロキシラジカル)や一酸化窒素(NO)などのフリーラジカル産生などが関与することが知られている。このうち、近年特に注目されているのがフリーラジカルである。

 血流再開時期と再灌流障害発生に関しては実験モデルを用いた種々の報告があるが、脳梗塞発症1〜2時間以内ならば血流を再開しても、臨床的に問題となるような再灌流障害は回避できるとの考えが一般的である。t-PA静注に発症3時間以内という条件が付けられているのも、再灌流障害を回避するためである。

 脳卒中治療ガイドライン2004には、血流再開に関連して次のような記述がある。「血栓溶解療法は、脳卒中の専門医師により診断がなされ、画像診断の専門医により頭部CTが評価されている場合でなければ、推奨されない。CTで早期虚血性変化、すなわち脳溝の不鮮明化や、mass effect 、浮腫、出血などがある場合、血栓溶解療法は避けるべきである」。

 脳に与えるダメージをできるだけ軽減しうる時間はtherapeutic window(治療可能時間域)と呼ばれるが、この時間内に適切な治療を行えば、障害血管領域の周辺部に存在する軽度〜中等度の虚血部位(ischemic penumbra )を救うことができるとも考えられている。ischemic penumbra が大きいと血流再開のメリットも大きいが、小さいと既に血液脳関門が破綻した他領域の血流を再開するウエイトも大きくなるため、再灌流障害のリスクも増大する。

 ischemic penumbra は、MRI の拡散強調画像(diffusion-weighted image:DWI)と灌流画像(perfusion-weighted image:PWI)におけるmismatch領域(DWI-PWI mismatch領域)に存在すると考えられている。しかしMRI を用いたこのischemic penumbra の評価法をめぐってはなお議論がある。

 脳神経細胞を保護し、脳虚血巣の拡大防止のために各種脳保護薬が開発されてきたが、臨床導入にまでは到らなかった。そうした中、2001年にフリーラジカルスカベンジャー(フリーラジカル除去薬)であるエダラボンが世界初の脳保護薬としてわが国で認可され、臨床の場で使われるようになった(発症後24時間以内に投与開始)。エダラボンは、脳虚血や血流再開時に産生され細胞膜障害や脳浮腫の原因となる活性酸素を除去することで、脳神経細胞の酸化による障害を抑制して脳保護作用を発揮する。

 脳卒中治療ガイドライン2004では、「脳梗塞(血栓症、塞栓症)の急性期の治療法として脳保護作用が期待される薬剤(エダラボン)を投与することが勧められる」として、推奨グレードBに位置付けられている。しかし、「エダラボンは市販後比較的日が浅く、急性腎不全などの副作用も報告されている。エビデンスを示す文献の数も少ないのでグレードBと判定されたが、未だ流動的である」という旨の附記もみられる。

(日経メディカル別冊)

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