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2008. 3. 19

JET

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脳血管

 Japanese EC-IC Bypass Trialの略。虚血性脳血管障害後慢性期の、内頸動脈系閉塞性病変に対する頭蓋外−頭蓋内(EC-IC)バイパス術の有用性を検討したわが国の無作為化試験。バイパス術群の脳卒中再発率は、内科的治療群に比べ有意に低かった。

 1985年に行われた無作為化試験では、症候性内頸動脈系閉塞性病変に対するEC-ICバイパスの有用性は否定された(New England Journal of Medicine 1985; 313: 1191)が、JETでは「内頸動脈系閉塞」だけでなく、「脳虚血」が証明されている患者ではバイパス術が有用である可能性が示唆されたと言える。
 
 対象は、直近3カ月間に内頸動脈系の閉塞性血栓病変による一過性脳虚血発作(TIA)、またはminor strokeの既往があり、かつ「血行力学的脳虚血」が確認された73歳以下の206例。29施設で登録された。

 「血行力学的脳虚血」とは、内頸動脈または中大脳動脈本幹に閉塞・狭窄を有し、かつ、発症から3週間以上経過した後に、安静時の脳血流低下(80%未満)と、脳循環予備能低下(アセタゾラミド血管反応性が10%未満)が認められた状態(Powers分類のステージII虚血)を指す。ただし、高度脳機能障害例(Rankinスケール≧3)や、高血糖(空腹時血糖値≧300mg/dLまたはインスリン使用)、高血圧(拡張期血圧≧110mmHg)、6カ月以内の心筋梗塞既往例は除外されている。

 対象者は、抗血小板薬群(チクロピジン・アスピリン単独または併用)とバイパス群(EC-ICバイパス+抗血小板薬)に無作為割り付けし、2年間追跡した。バイパス術を施行する外科医は指定されていた。

 1次評価項目は、総死亡+高度脳機能障害(Rankinスケール≧3)、内科医の判断による外科的血行再建術への移行、2次評価項目は、高度脳機能障害を伴う病巣側脳卒中再発とされた。

 結果は、平均18カ月の追跡期間後、1次評価項目(7% vs 17%)、2次評価項目(3% vs 11%)ともバイパス群にて有意に少なかった。バイパス群に手術による障害・死亡は1例も認めなかった。また脳血流の改善はバイパス群でのみ認められ、脳循環予備能の改善もバイパス群の方が大きかった。

 この結果から、本研究の対象となった患者にはバイパス術が有用と考えられた。ただし、本研究では周術期の死亡・障害発生率が極めて低く、一般臨床への外挿には注意が必要とされている。

 なお、本試験では血管反応性0〜10%を中等度虚血群、0%未満を高度虚血群と層別化して脳梗塞再発率を比較したが、予想に反し差はなかった。これを受け、より軽症の脳虚血例に対するEC-ICバイパスの有用性を検討すべく、コホート研究JET-2 studyが開始されている。

■参考文献
*1 脳卒中, 27(4) : 480, 2005.
*2 Nippon Rinsho. 2006 Oct 28;64 Suppl 7:524-7

(日経メディカル別冊)

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