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2008. 7. 13

MOSESとPROactive研究

脳卒中予防に貢献するARBとインスリン抵抗性改善薬

関連ジャンル:

脳血管

 脳卒中の最大の危険因子である高血圧に対しては、作用機序の異なる複数の降圧薬が用いられている。新しく登場した降圧薬では、それまで標準薬とされていた薬剤との降圧効果の差と新たな効能について検討、評価が行われる。MOSES(2005年)はこうした目的の研究の一つで、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)Ca拮抗薬との直接的(head-to-head)な比較を行った臨床試験である。

 危険因子として高血圧以外で血管系に大きな影響を与える糖尿病に関しても、その治療と心血管系疾患の合併症発症予防効果が注目されている。PROactive Study(2005年)は、2型糖尿病患者において、インスリン抵抗性改善薬による大血管合併症2次予防効果を検討した。試験結果から、大血管合併症にはインスリン抵抗性が関与していることが示唆されている。

 本稿では、脳卒中再発予防に対する新しい降圧薬の効果と、血圧以外の面から検討した臨床試験の概要を紹介する。

MOSES
Morbidity and Mortality After Stroke - Eprosartan vs Nitrendipine for Secondary Prevention

 MOSESは、多施設前向き無作為オープン結果遮蔽PROBE:prospective randomized open blinded-endpoint)試験で、Ca拮抗薬のnitrendipineとARBの eprosartanとの直接比較であり。脳卒中既往の高血圧患者において、降圧レベルが同水準であれば、eprosartanの脳心血管合併症と死亡の抑制効果はnitrendipineよりも大きいとする仮説を検証する目的で行われた。1次エンドポイント全死亡+全心血管および脳血管イベント(全再発イベントを含む)。

 対象は、治療が必要な高血圧症を有し、かつ試験登録前24カ月以内に脳血管イベント(TIA脳梗塞または脳出血)を発症した患者1405人。追跡期間は2年以上4年以内とされた(平均2.5年)。

 主な患者背景は以下の通り。平均年齢(eprosartan群67.7歳、nitrendipine群68.1歳)、男性(53.6%、54.8%)。外来血圧(150.7/87.0mmHg、152.0/87.2mmHg)、24時間血圧(139.7/81.7mmHg、140.0/81.5mmHg)。併発疾患:糖尿病(36.0%、37.7%)、脂質異常症(54.3%、51.9%)、冠動脈疾患(27.2%、25.3%)。治療状況:高血圧治療既往(82.8%、85.1%)。

 被験者は、eprosartan600mg/日投与群(681例)、nitrendipine 10mg/日投与群(671例)に無作為化され、2年間投与を受けた。3週目からは増量、あるいはACE阻害薬、ARB、Ca拮抗薬以外の併用投与を可とした。目標血圧は140/90mmHg未満である。

 その結果、eprosartan群では150.7/84.0mmHgから137.5/80.8mmHgへ、nitrendipine群では152.0/87.2mmHgから136.0/80.2mmHgへそれぞれ降下した。3カ月後に140/90mmHg未満を達成したのは、eprosartan群の75.5%、nitrendipine群の77.7%だった。

 複合1次エンドポイントの発生は461例だった。内訳はeprosartan群が206例、nitrendipine群255例。発生頻度は13.3例/100人・年 vs. 16.7例/100人・年で、発生密度比(IDR)0.79(p=0.014)だった。

 心血管イベントは178例で、eprosartan群は77例、nitrendipine群101例(IDR 0.75、p=0.061)。脳血管イベントは236例で、102例 vs. 134例(IDR 0.75、p=0.026)。有害イベントは、めまい/低血圧(12.9% vs. 10.6%)、肺炎(10.8% vs. 11.4%)、代謝不全(5.5% vs. 5.9%)で、両群間に有意な差はみられなかった。

 結論として、TIAを含む脳卒中既往の高リスク高血圧患者において、ARBとCa拮抗薬は早期正常血圧化と降圧については同程度であった。複合1次エンドポイントはeprosartan群が有意に抑制した。(Stroke. 2005;36:1218-1224)

PROactive Study
PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events): a randomised controlled trial

 PROactive Studyは多施設無作為化プラセボ対照試験で、高リスクの2型糖尿病患者において、インスリン抵抗性改善薬ピオグリタゾンによる大血管合併症の2次予防効果と死亡の抑制効果を検討する目的で行われた。

 1次エンドポイントは、全死亡、非致死的心筋梗塞MI:無症候性MIも含む)、脳卒中、急性冠症候群(ACS)冠動脈または下肢動脈における血管内または外科的インターベンション、足首より上の下肢切断、の複合エンドポイント初発までの時間とした。

 対象は5238例(35-75歳)。食事療法単独、あるいは食事療法+経口血糖降下薬の投与にもかかわらず、HbA1c値が6.5%を超えており、試験登録の6カ月以上前のMIまたは脳卒中、登録の6カ月以上前のPCIまたはCABG、3カ月以上前の急性冠症候群(ACS)、冠動脈疾患または下肢の閉塞性血管疾患のひとつ以上を有することとした。

 主な患者背景は、平均年齢61.8歳、糖尿病罹病期間は8年(中央値)。治療状況は、単独投与あるいは併用投与でメトホルミン62%、スルホニール尿素SU剤)62%、インスリン30%以上。

 被験者は、経口ピオグリタゾン投与群(2605例)とプラセボ投与群(2633例)に無作為化され、最初の1カ月は15mg、2カ月目は30mg、その後は45mgが投与された。他の糖尿病治療薬は継続投与を認めた。平均追跡期間は34.5カ月だった。

 結果は、ピオグリタゾンの忍容性は良好で、2カ月で投与量が45mgに達した例は89%、プラセボ群は91%、その後、最大用量投与例はそれぞれ93%、95%であった。試験薬の投与中止は、ピオグリタゾン群16%、プラセボ群17%。HbA1c値の低下度はピオグリタゾン群-0.8%、プラセボ群-0.3%(p<0.0001)だった。

 複合1次エンドポイントのうち、一つ以上のイベントを発症したのは、ピオグリタゾン群514例、プラセボ群572例で、両群間に有意差は認めなかった(ハザード比[HR]0.90、95%信頼区間[CI]:0.80-1.02、p=0.095)。各エンドポイントの発生は、死亡が110例 vs. 122例、脳卒中76例 vs. 96例などだった。

 主な2次エンドポイント(全死亡+非致死的MI+脳卒中)は、ピオグリタゾン群301例、プラセボ群358例であり、ピオグリタゾン群で有意に抑制した(HR 0.84、95%CI:0.72-0.98、p=0.027)。心不全による入院は149例(6%)vs. 108例(4%)であったが(p=0.007)、心不全による死亡率は両群とも1%で、ピオグリタゾンの安全性は良好であった。

 結論として、大血管イベント発症が高リスクの2型糖尿病患者において、ピオグリタゾンは全死亡、非致死的MI、脳卒中の発生を抑制した。本試験では、1次エンドポイントにおいてピオグリタゾンの有効性は示されなかったが、各種エンドポイントと2次エンドポイントにおいて有効性が示されたことは、インスリン抵抗性が2型糖尿病の大血管イベントの要因になっていることが示唆された。(The Lancet. 2005; 366:1279-1289)

(頓宮 潤=メディカルライター)

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