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2008. 5. 27

アテローム血栓性脳梗塞の病態解説と診療の最新事情

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循環器 | 脳血管

 アテローム血栓性脳梗塞は、脳の中大動脈など直径5〜8mm程度の太い動脈や頸部の頸動脈椎骨動脈動脈硬化が進行し、血栓形成による閉塞や、血管壁から血栓が剥離し、毛細血管を閉塞させることにより発症する。太い動脈が閉塞されるため、重症化するケースが多い。食生活の欧米化で日本でも増加傾向にある。

 動脈硬化による血管狭窄までには期間を要するため、その間に他の動脈から側副血行路ができていることが少なくなく、大きな動脈が閉塞していても、症状が軽く、画像診断では病巣が大きく撮像されないこともある。動脈硬化の進行には、高血圧、糖尿病、高脂血症などが強く影響している。高齢者だけではなく、若年者でも動脈硬化が脳梗塞の原因の20〜30%を占めるといわれている。

 主な診断・検査手法としては以下のようなものがある。
(1)脳の状態の診断 CTやMRI検査により、脳の断面を観察。脳梗塞の確認だけでなく、梗塞部位やその広がり、性質、脳卒中痕跡の有無などの評価を行う。CT画像では、発症直後(数時間)や軽症の場合には、異常がみられないことがある。これに対しMRI画像では、CT画像よりも早い時期に脳梗塞の診断が可能で、軽症例でもより明瞭に検出することができる。
(2)脳血管の状態の診断 脳梗塞は、脳血管の狭窄や閉塞により生じるため、血管の状態を調べることが重要となる。検査法には、超音波検査、MRアンギオグラフィー、ヘリカルCT、脳血管造影、SPECT(シングルフォトンCT)、PET(ポジトロンCT)などを用いる。
(3)血液凝固能の検査 血液の凝固能が亢進していると、脳梗塞を発症しやすくなる。このため、血小板や血液凝固線溶系の機能検査(プロトロンビン時間:PT、部分トロンボプラスチン時間:PTT、国際標準化比:INRなど)が行われる。
(4)その他の診断・検査 全身の状態を把握することを目的とした採血、検尿、検便、胸部X線検査など。

急性期と慢性期の治療
 アテローム血栓性脳梗塞は、その発症機序が血栓性、塞栓性、血行力学性など多彩であるために、脳血管病変や脳循環代謝動態の評価、経頭蓋ドップラーによる微小塞栓子(HITS)の検出などによって治療方針を決定する。

 発症直後(3時間または6時間以内)で、施設の整った医療機関であれば、血管内カテーテルによるウロキナーゼの局所動脈内投与を行う血栓溶解療法が可能である。

表1 アテローム血栓性脳梗塞の急性期治療法

 超急性期の虚血性脳血管障害の治療については、2005年10月から遺伝子組換え組織プラスミノーゲンアクチベータt-PA)製剤アルテプラーゼの静脈内投与が保険適用となった(発症後3時間以内)。しかし、同製剤は重篤な出血を来す可能性が高いために、使用に当たっては厳しい適応条件が定められている。日本における治験(J-ACT)では、脳出血例は5.8%(6/103例)であった。 

 発症後時間が経過し、血栓溶解療法が適応外になった症例には、抗血小板薬オザグレルナトリウム抗凝固薬アルガトロバンなどを発症早期に投与する(表1)。

 一方、脳梗塞は再発を繰り返すと重症化し、認知症の症状などが発現するようになる。脳梗塞の原因となる血栓は、脳血管の内膜に障害が生じ、その部分に血小板が凝集することで始まる。そこで非心原性脳梗塞の再発予防として、抗血小板薬(血小板凝集抑制薬)が用いられる。

 代表的な抗血小板薬としてアスピリンが挙げられるが、それ以外にチクロピジンシロスタゾール、さらに2006年に認可されたクロピドグレルが使用される。しかし、アスピリンを含め、脳梗塞の再発を確実に予防する薬剤はまだ存在しない。現在使用されている抗血小板薬の再発予防効果は、3年間の服用で26〜27人中1人に過ぎないというデータもある。このため、新薬による脳梗塞の再発予防を目的とした臨床試験が行われている。

ジピリダモール/アスピリン併用の有用性を示唆する研究も
 脳梗塞再発予防に対する抗血小板薬の併用療法について、新しい臨床試験結果が報告されている。

 ひとつは、アスピリンとクロピドグレルの抗血小板薬併用による、心筋梗塞、脳梗塞などの再発予防効果と血管危険因子を有する無症候性症例での発症予防効果を検討したもの(CHARISMA研究、2006)。中央値で28カ月追跡後、対照群(アスピリン+プラセボ群)との間に心血管系の原因による死亡、脳卒中、または心筋梗塞の発生数に関する有意差は認められなかった。長期間にわたる併用療法を支持するためにはさらなるデータが必要とされている(無症候性症例では有害である可能性も指摘されている)。

 もうひとつは、冠血管拡張薬/抗血小板薬のジピリダモール(日本では脳梗塞予防の適応なし)とアスピリンとの併用が、非心原性脳梗塞既往患者において、再発を予防する上で有用な治療選択肢のひとつであることを裏付ける5つの臨床試験データのメタ分析研究がある(2007)。

 メタ分析の対象には、大規模臨床試験のESPRIT試験(European / Australasian Stroke Prevention in Reversible Ischemia Trial)やESPS2試験(second European Stroke Prevention Study)が含まれており、ジピリダモールとアスピリンの併用治療が、アスピリン単独治療と比較し、ベースライン(治療開始時)の危険因子の数や程度にかかわらず、軽度の虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の既往患者を対象とした新規の血管イベント発症を有意に低減させることが明らかになった。

(頓宮 潤=メディカルライター)

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