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糖尿病診療の最新動向2014

【ピックアップ】
糖尿病患者に忍び寄る肝癌リスク
血小板が17万切ったら対応を

 ALTが31IU/L以上を肝機能異常と定義した場合、その頻度は男性32.8%、女性23.0%、男女合わせて28.6%だった。女性で低率だったが、イタリアの研究者はALTの正常値上限には性差があるとして、男性で30IU/L以下、女性で19IU/L以下が肝機能正常者と定義している。その基準を適用すると男性は33%、女性は43%になる。

 アルコールを60g/日以上摂取している患者は、男性6.9%、女性0.9%だった。また、HBs抗原の陽性率は男性1.8%、女性1.6%、男女合わせ1.7%、抗HCV(C型肝炎ウイルス)抗体陽性率は男性5.1%、女性5.0%、男女合わせ5.1%だった。

 肝炎ウイルスの感染状況についてさらに詳細に検討したところ、HBs抗原陽性者の中でもHBV(B型肝炎ウイルス)-DNAが高値(4.0log copy/mL以上)を示す患者は、10%と少なかった。

 肝疾患の疫学調査では、肝機能異常がありHBs抗原が陽性であればHBV由来と見なされる。だが、本コホートで肝機能異常にHBVの関与が強く疑われる患者の割合は、HBs抗原陽性者(1.7%)のわずか10%、つまり全体の0.2%程度と限定的であることが分かった。

 同様に抗HCV抗体陽性者のHCV-RNAを見たところ、陽性率は62%だった。肝機能異常にHCVの関与が強く疑われる患者の割合は、抗HCV抗体陽性者(5.1%)の62%であり、全体の3.2%程度と見積もられた。

 これらの患者背景について多変量解析を行ったところ、肝機能異常と有意な関連が認められた因子は、男女とも年齢、血小板数、HCV感染、BMIだった。一方、アルコールやHBV感染は、有意な関連因子にはならなかった。

 「HCV-RNAが陽性で肝機能異常の原因がHCVと考えられる患者(全体の3.2%)は、肝機能異常者(全体の28.6%)の1割強に当たる。肝機能異常に対するアルコールとHBVの寄与は比較的小さいことから、残りの8割強の肝機能異常の原因は、アルコールでも肝炎ウイルスでもない、つまりNAFLDと考えられる」と岡上氏。

NASHからの肝硬変は予後不良
 直接比較できるデータはないとのことだが、今回得られた糖尿病患者の肝機能異常合併率(28.6%)は、非糖尿病患者に比べて著明に高いわけではない。だが、NASHは進行するとALT値も基準範囲内に低下した、burned-out NASHという状態に至る。そのため、実際の肝機能異常の頻度は、得られた値よりも高いと見られる。

 また、NASHを母地とする肝硬変は治療に抵抗性で、ほぼ全例が肝硬変もしくは肝癌によって死亡しているという。肝機能異常を来した糖尿病患者の8割以上がNAFLDとされ、NASHから肝硬変に至った場合は予後不良であるとすれば、糖尿病患者における肝機能のフォローの重要性は明らかだ。

 では、具体的にどのような点に注意すればよいのか。岡上氏は、「AST、ALTが正常範囲上限を超え、かつ血小板数が17万/μLを切るようになったら、肝生検も念頭に一度は肝臓の専門医に紹介してほしい」と指摘する。

 通常、ウイルス性の肝硬変では血小板数が10万/μL以下となるが、NASH由来の場合は17万/μLを切った程度でも肝臓の線維化は進行しており、13万~14万/μL程度で既に肝硬変に至っているケースが多いとのこと。それだけ早期からの対応が不可欠というわけだ。今回の検討でも5642例中67例が肝癌を合併しており、その背景にある肝疾患の6割程度はNASHが疑われた。

 2014年7月、日本糖尿病学会と日本肝臓学会は共同で、糖尿病と肝疾患の関連を精査すると発表した。「ここ数年で、糖尿病患者におけるNAFLDの実態、例えば糖尿病患者でのNASHから肝硬変や肝癌への移行率といった具体的な知見が明らかになるだろう」と岡上氏は展望を語る。

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