MTX継続不能からの切り替えで最も有効なのは生物学的製剤のモノセラピー
MTXで治療効果が得られない場合、通常の抗リウマチ薬か生物学的製剤とMTXとの併用を行います。メタ解析によれば、臨床的有効性に関しては両者に大きな差はありませんが、骨破壊の抑制については、生物学的製剤の方が優れています。そのため、まずMTXと生物学的製剤との併用を検討し、経済的理由などで生物学的製剤を使用できない場合には、通常の抗リウマチ薬との併用を考慮します。

安全性については、生物学的製剤よりも通常の抗リウマチ薬との併用の方が、副作用で中止となるケースが多いことが指摘されています。生物学的製剤では、感染症がより多いという問題点はありますが、臓器障害はほとんどないのがその理由だと思います。
副作用が出現した場合など、MTXを継続できない症例では、多くの場合、最も有用なのは生物学的製剤の単剤療法(モノセラピー)です。
IL-6阻害薬のトシリズマブは、MTX併用なしのモノセラピーの有用性についてのエビデンスが最も豊富です。SATORI試験やSAMURAI試験、ACT-RAY試験など国内外の臨床試験でモノセラピーでの有効性が示されています。そのほか、エタネルセプト、ゴリムマブ、セルトリズマブ ペゴルなどについても単剤での有効性が確認されています。
原段階では、有効性において生物学的製剤を上回る抗リウマチ薬はないと思います。MTXを使用できない場合、安全性に十分配慮した上で、まずは生物学的製剤の使用を考慮するのがよいと考えています。
生物学的製剤ではありませんが、今年3月に承認されたトファシチニブも単剤での効果が期待されます。ただし、安全性の確認などはこれからの課題です。
MTXは投与が週単位で患者さんが把握しにくいこと、服用後の気分不快が比較的多いことなどにより、指示通り服用できていないことが多い(アドヒアランスが低い)と言われています。実際、「薬剤が余っているので処方量を調整してほしい」という患者さんが少なくありません。
一方、病院で投与する点滴製剤や皮下注製剤の生物学的製剤は、投与の実施状況が完全に把握できることが利点です。
皮下注製剤の自己注射は、患者さんが自分で投与間隔を変えることはありますが、薬剤が高価なこともあって無駄に廃棄されることはなく、使用状況を比較的正確につかむことができます。
当分はMTXが関節リウマチ治療の主役
ここまで述べてきたように、生物学的製剤は関節リウマチの治療体系を変える画期的変革をもたらしましたが、経済的な側面や内服であることなどの利便性を考慮すると、少なくともここ数年はMTXが関節リウマチ治療の主役だと思われます。
このため、間質性肺炎や肝障害などについてきちんとモニタリングをしながら、十分量を使うことが大切です。患者さんには、発熱や風邪症状など、何らかの不安がある場合、まず休薬し、後で主治医に相談するといった対応を指導するべきと考えています。(談)