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放射線画像の完全フィルムレス化に向けてシステム基盤を刷新
事例研究:静岡県立総合病院
構築半ばだが、毎月500万円分のフィルム代節約を実現

2009/06/08
増田克善

 一方、PACSや画像配信のアプリケーション部分は、放射線部門が選定を主導し、シーメンスの「syngo Imaging」を採用した。すなわち、将来を見据えたインフラは全体最適を、放射線部門の業務に密接にかかわるアプリケーション部分は部分最適を指向したと岩井氏は指摘する。


シーメンス旭メディテック マーケティング本部IKM事業部の山本宣治氏

シーメンス旭メディテック マーケティング本部IKM事業部の山本宣治氏

 「モダリティ選定のたびに、PACSのストレージ容量を気づかうのは避けたいこと。オープンストレージによって、モダリティを幅広く選択できる環境を整えることが第一条件でした」。佐藤氏も全体最適と部分最適の融合をこう評価する。


 シーメンスの提案には、オープンストレージに対して、マウントポイント・ソリューションとDICOMアーカイブ・ソリューションの2つの選択肢があった。前者は特定のミドルウエアに依存するが、後者は画像データの保存目的のみで利用する汎用的なDICOMサーバーが利用できた。依存性排除の観点から、これを全面に出したことが評価された。


 シーメンス旭メディテックのマーケティング本部IKM事業部のグループリーダー、山本宣治氏も、今回のようなインフラの調達形態は初めてと指摘し、次のように述べた。「通常は、直近のデータを保管するショートタームストレージとアーカイブ用のロングタームストレージを同じベンダーのインフラで構築することがほとんどですが、今回のようなケースは世界的に見ても珍しいもの。ストレージプールを医療情報システム全体の共有基盤として位置づけている点で注目すべきシステムです」(山本氏)。


フィルム消費は3分の1、500万円以上のコスト減に


 今回のシステム更改では、院内ネットワークも更新した。基幹ラインを10ギガビット/秒とし、支線も1ギガビット/秒へと高速化し、ネットワークスイッチ(L2クラス)を二重化してネットワークの可用性を高めた。


現在のシステムが稼働してからはフィルム消費が3分の1程度に激減

放射線部では、かつて月間約3万枚ものフィルムを使用していたが、現在のシステムが稼働してからはフィルム消費が3分の1程度に激減

 その結果、これまで院内情報システム(HIS)端末では非可逆圧縮画像しか表示できなかったが、オリジナル画像も高速に表示できるようになった。併せて画像ポータルサイトを開設し、電子カルテから放射線部門の画像やレポートといったコンテンツを一元管理し、そこから高速に表示できるようにした。


 「放射線部の読影端末に限らず、診療科に配置した高精細モニター(2M:200万画素クラス)でも、鮮明なオリジナル画像がスピーディに閲覧できるようになり、フィルムレスに向けた環境が整いました。現在、高精細モニターは、ニーズが高い診療科・病棟だけに設置していますが、費用対効果を見極めつつ配備を進めていくことになるでしょう」(佐藤氏)と、画像診断環境が大きく向上したことを評価する。


 放射線部では、かつて月間約3万枚ものフィルムを使用していたが、現在のシステムが稼働してからは、フィルム消費が3分の1程度に激減した。フィルムレス化はまだ道半ばだが、現時点でも月額500万円以上のフィルム代を削減できているという。フィルム運搬の人的コストや保管管理コストなどを含め、今後、さらにコスト削減が期待できそうだ。


 佐藤氏はフィルムレス化について、「今回のシステム更改で完全フィルムレス化に向けた基盤ができました。しかし、フィルムレス化による成果を得るためには、画像診断にかかわる業務そのものが大きく変わることを、すべての医療スタッフが理解することが重要です」と指摘する。


放射線部の大川剛史氏

放射線部の大川剛史氏

 新システムによって画像管理業務も変化した。従来、PACSサーバーに保存されたデータは一定期間を経てDVDにアーカイブされたが、新システムでは、ショートタームストレージとECMEMCのロングタームストレージに同時に保存され、一定期間後にショートタームストレージのデータを逐次削除していくことになる。


 したがって、撮影ミスなどが発生した場合には、両ストレージのデータ修正が確実に行われなければならない。新システムではイベント発生時の標準化されたメッセージ規格であるHL7を使うことにより、様々なミスをケーススタディし、それに応じた1回の修正オペレーションで、同時に両ストレージのデータ修正ができる仕組みを取り入れた。


 放射線部の大川剛史氏は、「ヒューマンエラーを完全になくすことはできないので、ミスが発生したときの修正は確実に実施される必要があります。その点、この仕組みは確実性が高く、修正ログによる修正責任も明確にできるようになっています」と特徴を述べる。


 また、システムの運用管理について、運用を担当する静岡情報処理センター医療システム事業部システム部の内田和将氏は、「以前はシステムを統合管理できる仕組みはありませんでしたが、サーバー管理にJP1(日立製)、ストレージ管理にEMCのECCを導入したことによって、システム運用の効率性が高まり、将来的には管理コストの削減が見込めます」という。


病院全体の医療情報インフラとして利用


静岡情報処理センター医療システム事業部システム部の内田和将氏

静岡情報処理センター医療システム事業部システム部の内田和将氏

 今回のシステム更改では、既存の画像管理システムが2008年12月にはデータ保管容量が限界に達することが見込まれたため、同年6月のインフラ調達からタイトなスケジュールの中でシステム開発と過去データの移管を行い、わずか4カ月後の10月には稼動にこぎ着けた。


 ショートタームストレージとオープン環境下のロングタームストレージがオンラインで同期するシステムになったことを受け、今後は、両ストレージそれぞれで、Volumeデータの保存期間の設定や5年以上経過した画像データの取り扱いなど、画像保管規約をルール化していく必要があるとする。佐藤氏は、そうしたルール化に基づいて急激に増加する画像データを把握・制御することと、今後、必要となるディスク容量の予測、そのための予算化が重要と指摘する。


 このように放射線部門がシステムを理解し、システム運用のコスト意識を持つようになったことに対して岩井氏は、「部門の方々が自分たちのシステムという意識での運用やコストに対する意識を深めてくれたことは、独法化に向けての大きな成果といえます」と強調する。


 医療情報インフラの全体最適化を推進した県立総合病院ではオーダリングシステムの更新時期を迎えており、サーバーの仮想化・統合化も視野に入れて、今回のシステム基盤に統合していく計画だ。また、放射線部門システムとしては、県立こども病院と県立こころの医療センターの画像アーカイブもネットワーク経由で共有ストレージに保管していくことで、静岡県立病院機構としてのシステム運用の効率化、コスト削減を目指すという。


(増田 克善=委嘱ライター)

●放射線画像システムの概要図
(クリックすると拡大します/EMCジャパン提供)




■病院概要
名称:静岡県立総合病院
院長:神原啓文氏
住所:静岡市葵区北安東4-27-1
病床数:720床(一般620床、結核100床)
職員数:834人(非常勤および臨時職員160人)
Webサイト:http://www.shizuoka-pho.jp/sogo/


システム導入主要ベンダー:
EMCジャパン
シーメンス旭メディテック

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