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事例研究:けいじゅヘルスケアシステム

2006/12/22
井関清経

電子カルテの所見欄は、全職種が同じフォーマットに記載していくため、時系列に患者の状態が把握できる仕組みになっている。

2.電子カルテの5つの特徴
 電子カルテはオーダリングシステムと同じソフトウェア・サービス(大阪市淀川区)に依頼して、2002年5月に導入した。一口に電子カルテといっても千差万別で、病院が提供するサービスによりその内容は異なる。神野氏が電子カルテ導入の目的を、「医療の質」向上と掲げたのは、表1のように電子カルテにより、情報の共有化が進み、医療の透明性(ピアレビュー、監査)が確保できることなどが理由だ。

 「けいじゅヘルスケアシステム」の電子カルテの主な特徴は以下の5点だ。

1)全職種で情報共有
 電子カルテは「一患者一カルテ」。職員は、IDとパスワードを入力すれば、パソコン端末がある場所であれば、どこでも利用が可能だ。電子カルテに記載されている内容は、関係する職種であればすべて閲覧できる。特徴の一つが所見欄。関係する職種が同じ欄に時系列に記載していくため、職種別だった紙の記録と比べて、患者の状態が格段に把握しやすくなった。

 そのほか、オーダリングシステムの情報である投薬や注射、検査結果などとも連動しており、これらの情報もすべて閲覧できる。また、ほぼ全書類を電子的に保存しており、患者の同意書など手書きで書いてもらった書類も、スキャナーで取り込んでいる。

 当然ながら、セキュリティー対策として、電子カルテの利用記録(ログ)は全部保存しており、どの端末でいつどこで誰が入力したか、あるいは閲覧したかなどがすべて把握できる形になっている。ログの監査は、月1回行っている。

 電子カルテは、恵寿総合病院だけでなく、次に述べるように、「けいじゅヘルスケアシステム」全体で導入している。つまり、電子カルテによる患者・利用者の情報の共有化は、換言すれば各職種の仕事内容を関係者のすべてが把握できることを意味する。「従来でも医師の診療録に看護記録をはさむなど、他の職種の目に触れる状態にあったから、職員の抵抗はなかった。情報の共有化によるメリットを想定できたため、導入はスムーズだった」と董仙会本部事務局情報管理課長の直江幸範氏は説明する。

 電子カルテのメリットはいくつかある。まず挙げられるのが、直江氏が指摘したように情報の共有化だ。「一患者一カルテ」であれば、1人の患者にかかわるすべての職員が、院内のどんな場所にいても、迅速に情報を見ることができる上、それが時系列に記載されるため、「誰がいつ、どんな医療行為を行ったか」が把握しやすい。その上、例えば、退院前にMSWが患者の家屋評価に行ったとする。車椅子は使えるか、手すりはどうか、一人で生活できるかなど事細かに調べた結果をカルテに記載する。こうした記録を目にすることで、他の職種の業務内容への理解が深まり、ひいては退院後の患者の生活にも思いが至るようになることが期待される。

 また、多くの人の目に触れるため、皆が記載を詳しく書くようになったというメリットもあるという。カンファレンスも、パソコン1台あれば、検査データや画像などをすぐに引き出せるため、詳細な情報を基に実施することが可能であり、「ところで、○○の血液検査の結果は?」と出席者から質問を受けた場合なども、すぐにデータを見ることが可能だ。

2)全施設・事業所で共有
 2006年4月から、従来は各施設に分散していたサーバーを1カ所に集め、システムの統合を進めたため、恵寿総合病院だけではなく、「けいじゅヘルスケアシステム」の全施設・事業所での「一患者一カルテ」を実現させた。

 例えば、老人保健施設の入所者が発熱し、恵寿総合病院に入院したとする。それまでの体温、血圧、食事の摂取量のほか、老健施設での所見を同院の医師は簡単に見ることができるので、わざわざ老健施設に問い合わせずに済むなど、業務の効率化とサービスの継続的な提供が可能になった。 

電子クリニカルパスの例(経皮的血管形成術)。

3)電子クリニカルパスと連動
 恵寿総合病院ではクリニカルパスを約100種類作成している。これらはすべて電子化され、電子カルテと連動している。例えば、経皮的血管形成術で入院した患者にパスを適用すれば、それに基づく各種の検査や処置などの医師の指示や、食事や看護計画など、その患者に提供すべきサービスの実施計画がすべて自動的にオーダリングシステム上に記載される。電子カルテからいつでもこれらの情報を呼び出すことができ、その実施結果の記載も可能になっている。適用したパスより入院期間が長期化した場合など、パスとは異なる入院経過をたどったものを「バリアンス」というが、その原因も電子カルテ上の患者情報を照合すれば同定しやすくなる。

DPC入院情報入力画面。病名、手術、処置の内容などを入力すれば、自動的に適用するDPCコードや入院期間別の診療単価などが分かる。

4)DPCとの連動
 恵寿総合病院では、2006年4月からDPC(診断群分類別包括評価)による診療報酬の請求を開始した。電子カルテ上で病名や手術や合併症の有無などを入力すると、最適なDPCのコードを選択でき、当該病名の入院単価も表示されるようになっている。その効果は大きく、平均在院日数は2005年末では18~19日だったが、最近は約13日まで激減している。従来は入院後に実施していた術前検査を、外来で行うようになったことなどが主因だ。

5)連携先医療機関と共有
 恵寿総合病院には、連携先医療機関として約100施設が登録されている。そのうちIT化が進んだ約20施設は、VPN(Virtual Private Network)のソフトウエアをあらかじめインストールしており、紹介したり、あるいは逆紹介された患者のカルテを見ることができるようになっている。閲覧できるのは、当該患者のほか、連携先医療機関の医師と恵寿総合病院の3者が同意した場合だ。連携先医療機関のメリットは大きく、紹介した患者の入院後の様子を病院まで足を運ばなくても把握することができる上、退院後もそれまでの経過を詳しく知ることができるようになった。

 さらに、電子カルテのASP(Application Service Provider)サービスも手がけている。以前は恵寿総合病院に勤務し、七尾市内で新規開業した医師が利用しており、同院と全く同じ環境で電子カルテを利用している。これは董仙会が特別医療法人の収益事業として手がけているものだが、双方の合意があれば情報共有が可能になる上、レセプト監査システムなど、恵寿総合病院が培ったノウハウが、ASP利用の医療機関が享受できるメリットがある。

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