表1 新型インフルエンザ対策シミュレーションで浮かび上がった課題(前橋赤十字病院)

 病院単位あるいは地域も巻き込んだ形で、新型インフルエンザ対策のシミュレーションに取り組むところが増えている。前橋赤十字病院もその一つ。このほどシミュレーションを実施したところ、受け入れ予定病棟では電子カルテが使えない、ゴーグルのサイズが合わない、看護師の勤務は3交代は無理--など、机上の想定では分からなかった問題点が浮き彫りになった。2月に長崎で開催された日本環境感染症学会で、貴重な経験を発表した。

 前橋赤十字病院は、592床(一般:568床、ドック:18床、感染症:6床)の総合病院。群馬県のアクションプランでは、新型インフルエンザの発生時には入院患者50人を受け入れることになっている。これまで、県の新型インフルエンザ対策の行動計画への参加、新型インフルエンザ対策講習会の開催、対応を検討するための臨時医局会の開催、個人防護用品の備蓄、地域医師会への前橋赤十字病院の対応の説明--などに取り組んできた。

 病院の計画では、50人の入院は、一般患者が転棟あるいは退院して1病棟があくまでの1日間、2類感染病棟を使用するはずだった。今回のシミュレーションでは、2類感染病棟への収容をスムーズに行うことを主目的に実施した。

 その結果、机上の計画だけでは気づかなかった問題点を把握できた。たとえば、2類感染病棟では、他の病棟では普段使っている電子カルテが使えなかった。また、酸素の配管がないことも明らかになった。

 防護用品については、サイズが合わない場合にゴーグルや襟元に隙間ができてしまう、ゴーグルは曇りやすく診療に支障をきたす、レントゲンフイルムのカバー用のゴミ袋が必要となる、オーバーオールを着用しての行動は30分が限界である--など、様々な課題が浮上した。

 このほか、配膳下膳の手順が想定どおりにいかない、病棟準備後の転棟の手順および通路の確保に難がある、多量の個人防護具(PPE)の廃棄場所と運搬手順が不明で自治体の回収方法も決められていない、看護師の勤務は3交代では無理である--などの問題点も確認できたという。

 シミュレーションで把握した問題点については、紙カルテの一時使用を許可する、酸素ボンベの設置を要請する、色々なサイズのオーバーオールを購入する、ゴーグルではなくフェイスシールドに変更するなど、具体的な対策をとることになった。ただし、多量のPPEの廃棄問題など、今後の検討を要するものもあった。

 学会で報告した丹下正一氏は、「シミュレーションを行うことで、机上の想定では分からなかった課題が判明するだけでなく、スタッフの慣れを期待できる」と実地訓練の必要性を強調していた。なお、会場では、各施設が取り組んでいるシミュレーションで浮かび上がった課題を持ち寄り、情報を交換する意義を指摘する声が少なくなかった。