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特集 インフルエンザ 2007/2008

【専門家に聞く】(No.7)
「パンデミックになったら診療しないなんて悲しい」
WHOメディカルオフィサー 進藤奈邦子氏

-- 中国の事例は、父親は死亡した息子からのヒト-ヒト感染であることが確認されました。しかし、息子さんの方はまだ感染源がはっきりしていません。

進藤 息子さんの方は、発症6日前に家禽類なども扱う市場で生きている鳥に接触していたという情報はあります。現地の衛生局が現在も感染ルートの解明を続けているところです。

-- 中国ではニワトリなどに鳥インフルエンザワクチンを打つのが常態化しているようです。となると、元気そうに見えるニワトリから感染する危険もあるということになります。

進藤 感染源がマスクされてしまう危険はあります。中国の場合、鳥インフルエンザの発生地とヒト感染例の発生地が重なっていないという不思議な現象があります。今回の事例もそうです。

-- パキスタンではアフガニスタンとの国境付近の村で、感染したニワトリを処分した男性とその家族に集団感染がありました。

進藤 WHOでは、集団感染を「疫学的にリンクした2人以上、そのうち少なくとも1人がH5N1の実験室診断が陽性、疫学的にリンクした死因不明の死亡例を含む」と定義しています。2003年以来2007年11月までの集計で、42件ありました(図3)。2007年11月まで12カ国中10カ国で発生しています。その後12月にミャンマーとパキスタンから患者報告があり、ヒト感染例を報告した国は14カ国になりました。

 パキスタンでは、8人の集団感染というので緊迫した状況でした。これまでの集団感染は、限られた事例を除いてほとんどが2例か3例の小規模なものが主でしたから。2006年1月にトルコで発生した11人の集団感染のときもそうでしたが、これだけの人数がいっぺんに感染したとなると、ウイルスが容易にヒト-ヒト感染を起こすように変異したのではと緊張するわけです。幸い、パキスタンの例も「行き止まり感染」でした。

図3 鳥インフルエンザのヒト集団感染(WHO、2003年~2007年11月)

-- パキスタンの事例では、米国の空港に米国疾病予防管理センターCDC)が出動したと聞き及びました。

進藤 お葬式のためにパキスタンに帰国していた兄弟の1人が、お葬式の最中にもう1人の兄弟が死んだこともあり、「鳥インフルエンザのヒト感染」ではと疑い、自分も感染の可能性があるということで、米の空港で検疫所に申し出たのです。彼は米国病院に勤務する微生物学者でした。幸い陰性でしたので事なきを得ています。

-- 申し出てもらってよかったですね。まったく状況は異なりますが、SARSのときに、空港での水際作戦をすり抜けてしまった事例がありました。香港を旅行していたカナダ人が感染し、トロントでもSARSの感染が確認されたものです。

進藤 今回も本当にこの人が感染していて、可能性を隠したまま検疫をすり抜けてしまっていたなら、米国発のパンデミックになった可能性もありました。

-- ヒト感染例ではありませんが、インドでは、鳥インフルエンザにかかったニワトリの処分をめぐって住民が反対行動に出ているという状況が伝えられています。ヒト感染の発生が心配です。

進藤 危惧はしていますが、インドの場合は、日本脳炎やポリオなど感染症アウトブレークに対する独自の調査チームが活発に活動していて、実験室診断も国内の研究施設で行える実力があります。WHOの現地オフィスとも連携は良好です。問題は隣国のバングラディッシュです。サーベイランスの体制が整っておらず、実験室診断技術にも不安材料があります。受け入れ体制という意味では、イランも心配です。

-- 北朝鮮のその後はいかがですか。

進藤 鳥インフルエンザの発生について未確認情報がありましたが、これまで発生の事実は確認されていません。

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