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特集 インフルエンザ 2007/2008

【専門家に聞く】(No.7)
「パンデミックになったら診療しないなんて悲しい」
WHOメディカルオフィサー 進藤奈邦子氏

 患者の診療を拒否することは考えられない--。日本の医療現場で、パンデミックの際に「診療拒否も選択肢」という議論があることを知ったWHO(世界保健機関)メディカルオフィサーの進藤奈邦子氏(写真)は、「とても悲しい気分になった」と続けた。鳥インフルエンザをはじめとするアウトブレイクの封じ込めのために世界を駆け回り、常に危険と背中合わせの中で医療活動を展開する進藤氏にとって、まったく予期せぬ話題だった。ただ、診療拒否の背景に疲弊する医師の実態があるとの指摘に話が及び、こう付け加えた。「私も勤務医をしていたので彼らの心情は分からないでもない。確かに使命感だけではパンデミックは乗り切れない。最前線に立つ医師らのサポートは不可欠だから」。

■ 「行き止まり感染」に留まるも、新型出現の危険は高まる

-- 今日はお忙しいところお時間を割いていただきありがとうございます。世界を駆け回った後、東京に立ち寄られたと聞きました。

進藤 中国江蘇省の事例では、私はWHOのジュネーブ本部で情報収集・整理、リスクアセスメントの担当をしましたが、パキスタンの兄弟の事例には直接出向きました。その直後、サウジアラビアで大規模な鳥インフルエンザが発生したというので出かけました。その足で今回、東京に来ました。東京は日本臨床微生物学会に出席するためですが。

-- 昨年末から、鳥インフルエンザのヒト感染例が相次いで報告されています(表1)。WHOとして、現状の把握はどこまで進んでいますか。

表1 昨年末から相次いで報告された鳥インフルエンザのヒト感染例(WHOデータを元に作成)

進藤 ほとんど全ての例が家族内感染、血縁者間での感染に留まっています。いわゆる「行き止まり感染」です。今のところ、ヒト-ヒト感染が容易に起こっているような状況ではありません。これまでもそうですが、鳥インフルエンザのヒト感染例は、北半球の冬季にあたる12~3月にかけて多く発生しています。ただ、今回はミャンマーやパキスタンで初めて確認されていますし、中国では初めてヒト-ヒト感染例が確認されました。沈静化していたベトナムからも再びヒト感染例の報告があるなど、蔓延の危惧は高まっています。

-- 新型インフルエンザの出現の危険性は、さらに高まっているとみていいですか。

進藤 「行き止まり感染」に留まっていますので、直ちに新型インフルエンザの出現に結びつくわけではありません。しかし、鳥の間で鳥インフルエンザウイルスH5N1)が世界的に蔓延している現状(図1)やヒト感染例の拡大(図2)を考えるなら、いつ新型インフルエンザが出現してもおかしくない状況にはあると思います。

図1 鳥インフルエンザの発生が確認された地域(WHO、2003年~2007年)

図2 鳥インフルエンザのヒト感染例の発生が確認された地域(WHO、2003年~2007年)

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