新型インフルエンザの出現が懸念されている。鳥類間ではA型(H5N1)が世界的に流行し、最近も英国で七面鳥の大量死が発生したばかり。鶏などから感染した人の事例も相次ぎ、死亡例は全世界で200例を越えた。H5N1が変異し人への大流行に発展する危険性は高まるばかりだが、実効性のある対策を訴え続けている福岡県赤十字血液センター所長の柏木征三郎氏(写真)は、診療所や地域の病院などの医療機関への支援を急ぐべきと説く。医療崩壊が現実化している今、「第一線の医師らが倒れたら対策の打つ手がなくなる」からだ。

−− 新型インフルエンザの流行が起こってしまうと、全世界で16億〜20億人が罹患し5000万〜6000万人が死亡すると推測されています。日本では3200万〜3900万人が罹患し100万人が死亡する。第二次世界大戦の日本の戦争犠牲者数は200万人とも言われていますから相当な数字です。

柏木 1918年に発生したスペインかぜの大流行と比較してみると、さらに驚くべき数字であることが明らかになります。スペインかぜの時は、世界人口18億人の時代に6億人が罹患し2000万〜4000万人が死亡しました。日本でも5700万人の人口でしたが、2300万人が罹患し38万人が死亡したのです。これでさえ恐ろしい数字ですが、新型インフルエンザでは、倍近くあるいは倍以上の犠牲者が出ると予測されているのです。

−− スペインかぜの流行時と現在を比べて最も違うことの1つは、新型インフルエンザの原因となるウイルスの候補がかなり絞り込まれている点ではないでしょうか。この点で、ある程度はアドバンテージがあるように思えます。

柏木 最も可能性の高いウイルスとして挙がっているのが、鳥類間で蔓延しつつあるH5N1です。世界保健機関(WHO)も警告を発しています。人から人へ感染する変異型が発生し、大流行に発展する事態が懸念されるからです。

−− 鶏などからH5N1に感染した人の事例が相次いでいます。死亡例も全世界で200例を越えました。2003年は4人の感染例があり4人全員が死亡しています。以降、2004年は46例中32例、2005年は98例中43例、2006年は115例中79例が死亡しています。2007年は9月10日現在で65例中42例が死亡となっています(図1、2)。死亡率は2005年にいったん40%台に落ちましたが、それ以外は60%台と高いまま推移しています。

図1 人のH5N1感染確定例(WHO、9月10日現在)

図2 人のH5N1感染死亡例(WHO、9月10日現在)

柏木 事態は悪化していると思います。一方で、様々な研究が精力的に進められているのも事実です。H5N1の人への感染例を解析することで、新型インフルエンザ対策の基礎となるデータも得られつつあります。