日本臨床内科医会は2000/2001年シーズンからインフルエンザ多施設研究に取り組み、数多くのエビデンスを蓄積してきた。その成果をもとに昨冬「インフルエンザ診療マニュアル」を作成、この冬には新たな知見を盛り込んだ2007-2008年版を発表した。その最新版をもとに、インフルエンザ診療のポイントをピックアップした。5回目のテーマは「インフルエンザウイルスの動態と感染予防」。
感染予防は、インフルエンザウイルスの動態を知ることから始まる。
インフルエンザはウイルスが気道粘膜に感染したあと増殖を繰り返し、およそ24時間の潜伏期間を経て発症する。増殖したウイルスは、咳、くしゃみ、鼻汁により空気中に排泄され直接感染源となる。さらに、排泄されたウイルスから水分が失われた飛沫核も、乾燥した冷たい空気中を浮遊し感染源となる。
したがって感染予防には、ウイルスや飛沫核の気道侵入を防ぐため、ウイルス対応のマスクの使用、室内の加湿加温、空気の入れ替え、環境整備等が必要となる。うがいも咽頭粘膜浄化により局所の感染防御機構を保つとされており有効である。またワクチンが予防に有効なことは言うまでもない。
日臨内研究で、インフルエンザ罹患者3分の1が何らかの形で家庭内感染にかかわっており、特に小児が家庭内感染の源となり、多くの母親が家庭内で感染を受けることが明らかになった(関連記事)。また、家庭内感染の第1発症者から第2発症者までの発症間隔は最長10日に及び(図5-1)、罹患者が解熱したあとも十分な注意が必要となる。
ある小学校においては、インフルエンザ罹患者のうち11%が有熱で登校し、10%は校内で発熱しているという調査結果を得ている。インフルエンザウイルスの拡散を防止するためには、それぞれの家庭での厳格な判断と学校関係者に対する啓発が必要となる。

図5-1 家庭内感染における第1発症者から第2発症者までの発症間隔ごとの家族数53)
(注)本マニュアルは日本臨床内科医会誌2007年12月号の臨時付録ですが、日本臨床内科医会事務局(東京都医師会館内、電話:03-3259-6111)でも入手可能です。
★参考文献
53)Hirotsu N, et al. Intrafamillial transmission of Influenza A and B. Options for control of influenza VI. (in press)
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