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特集 インフルエンザ 2007/2008

【連載】インフルエンザ診療マニュアル2007(No.3)
抗インフルエンザ薬の種類と特徴を再確認する
監修:日本臨床内科医会インフルエンザ研究班

 日本臨床内科医会は2000/2001年シーズンからインフルエンザ多施設研究に取り組み、数多くのエビデンスを蓄積してきた。その成果をもとに昨冬「インフルエンザ診療マニュアル」を作成、この冬には新たな知見を盛り込んだ2007-2008年版を発表した。その最新版をもとに、インフルエンザ診療のポイントをピックアップした。3回目のテーマは「抗インフルエンザ薬について」。

 抗インフルエンザ薬として1998年アマンタジン(商品名;シンメトレル)がA型に、また2001年ノイラミニダーゼ阻害薬のオセルタミビル(同;タミフル)とザナミビル(同;リレンザ)がA型またはB型に保険適応となった。これを期に、インフルエンザ治療は対症療法中心から抗インフルエンザ薬中心に一変した(表3-1参照)。

表3-1 抗インフルエンザ薬の種類と特色

 このうち、アマンタジンは、A型ウイルスが細胞内で増殖する際に働くM2蛋白質を阻害して効果を発揮するため、A型のみ有効で、安価だが耐性ウイルスが出現しやすい109)。これに対し、オセルタミビルとザナミビルは、ウイルスが増殖して細胞から出て行く段階で重要な働きをしているノイラミニダーゼの阻害薬として開発され、A型、B型ともに有効である。

 オセルタミビルは経口薬で、カプセルとドライシロップがあるが、1歳未満の安全性と有効性は確立していない。副作用は従来は胃腸障害等の軽微なものが多かった。最近、因果関係は不明だが、内服開始後の精神・神経症状(意識障害、異常行動、せん妄、幻覚、妄想、痙攣等)が指摘されるようになり、2006-07年シーズン途中から10歳以上の未成年では原則として使用不可となった(関連記事)。

 一方のザナミビルは吸入薬で、ウイルス増殖部位の気道粘膜に直接かつ迅速に作用するため、全身への影響が少なく、オセルタミビルよりも副作用や耐性ウイルスが少ないと考えられる。ただし小児については「本剤を適切に吸入投与できると判断された場合に限る」とされており、4歳以下の幼児に対する安全性は確立していない。また稀に気管支痙攣が報告されており、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者では使用に注意する必要がある。

 ではオセルタミビルとザナミビルの有効性はどうか。

 オセルタミビル投与後、A型は30時間前後で解熱し、発症から解熱までの時間(発熱時間)は投薬開始が早いほど、また罹患中の最高体温が低いほど短い。B型ではA型よりも解熱時間、発熱時間とも有意に長く有効性が劣っていた22,29)

 一方、ザナミビルはA型とB型の有効性の差が小さく、B型ではオセルタミビルよりも有効性が高かった(関連記事38,45,46)

 これまで、ザナミビルは吸入薬で使用法がやや煩雑という印象が強かったが、2006-07年シーズンに日本臨床内科医会が患者向けに行ったアンケート調査では、吸入器の操作は10~15歳の約70%は本人が操作しており、5~9歳を含めた全対象者の約80%から吸入自体も簡単だったとの回答が得られた(関連記事)。

図3-1 発熱時からの経時的ウイルス残存率(迅速診断による)14)

 ノイラミニダーゼ阻害薬は比較的速やかに解熱するため3~4日で内服を止めるケースもあるが、ウイルスは体内に残存し排泄される場合が少なくなく(図3-1)、周囲への感染を防ぐには5日間の投薬が望ましい14)

 ウイルス分離によるオセルタミビル投与開始4~6日目のウイルス残存率はA型よりB型で高く、成人よりも0~6歳の乳幼児で高い。初回感染が多い乳幼児ではウイルス量も多く、同薬を使用してもウイルス消失が遅れることが考えられた(図3-2)。

図3-2 オセルタミビル投与開始4~6日目のウイルス残存率(ウイルス分離による)40)

 抗インフルエンザ薬の耐性はどうか。

 5年間の研究でオセルタミビルは毎年高い有効性がみられたが、アマンタジンは効果が減弱しつつあった39,41,109-114)

 オセルタミビル耐性ウイルスの出現率は治験では大人0.4%、小児4%と低かったが115)、3歳以下中心の最近の研究で治療50人中9人から耐性ウイルスが治療4日目から検出されたとの報告がある116)。また同薬耐性となるノイラミニダーゼのアミノ酸変異は現在までR292K、E119V、H274Y、D198Nの4つが確認されている117)。しかし成人主体の我々の研究(2003-04、2004-05年)では治療開始4~6日目にIC50の著しい増加や耐性ウイルス(遺伝子解析)の出現はみられていない。

 米国CDCは2005-06年シーズン当初にA/H3N2分離株の91%(109/120)でアマンタジン耐性ウイルスが検出され、オセルタミビルやザナミビルの耐性ウイルスは検出されなかったことから、抗インフルエンザ薬としてアマンタジンではなく後2者を使用するよう緊急勧告を出した(関連記事)。

(注)本マニュアルは日本臨床内科医会誌2007年12月号の臨時付録ですが、日本臨床内科医会事務局(東京都医師会館内、電話:03-3259-6111)でも入手可能です。


★参考文献
14) Hirotsu N, et al. Effects of antiviral drugs on viral detection in influenza patients and on the sequential infection to their family members. Serial examination by quick diagnosis (Capilia) and virus culture. In: Kawaoka Y, eds. Options for control of influenza V. Amsterdam, the Netherlands: Elsevier Science Publishers; 2004;105-108.
22) Kawai N, et al. Factors influencing the effectiveness of oseltamivir and amantadine for the treatment of influenza. A Japanese, multi-center study of the 2002/2003 influenza season. Clin Infect Dis 40:1309-1316, 2005
29) Kawai N, et al. A comparison of the effectiveness of oseltamivir for the treatment of influenza A and influenza B: a Japanese multicenter study of the 2003-2004 and 2004-2005 influenza seasons. Clin Infect Dis 43:439-444,2006
38)Kawai N, et al. Zanamivir treatment is equally effective for both influenza A and influenza B. Clin Infect Dis 44:1666, 2007
39)河合直樹,ほか.過去5シーズンにおけるアマンタジンの有効性の推移.インフルエンザ8:217-221,2007
40) Kawai N, et al. Longer virus shedding in influenza B than in influenza A among outpatients treated with oseltamivir. J Infect 55:267-272,2007
41) Kawai N, et al. A change in the effectiveness of amantadine for the treatment of influenza over the 2003-2004, 2004-2005 and 2005-2006 influenza seasons in Japan. J Infect Chemother (in press)
45) 河合直樹,ほか.2006/2007年冬におけるインフルエンザの解析.日本医事新報(印刷中)
46) Kawai N, et al. A comparison of the effectiveness of zanamivir and oseltamivir for the treatment of influenza A and B. J Infect (in press)
109)臨床と研究83:1333-1336, 2006
110) Clin Infect Dis 43:445-446,2006
111)Nature, 226: 82-83, 1970
112)Philos. Trans. R. Soc. Lond. B. Biol. Sci, 356: 1877-1884, 2001
113)J. Infect. Dis, 188: 57-61, 2003
114)Lancet , 366: 1175-81, 2005
115)Rev Med Virol, 10: 45-55, 2000
116)Lancet, 364: 759-765, 2004
117)Antiviral Res, 49: 147-156, 2001

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