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特集 インフルエンザ 2007/2008

【連載】インフルエンザ診療マニュアル2007(No.2)
診察室で実施可能な迅速抗原検出キットを使いこなす
監修:日本臨床内科医会インフルエンザ研究班

 日本臨床内科医会は2000/2001年シーズンからインフルエンザ多施設研究に取り組み、数多くのエビデンスを蓄積してきた。その成果をもとに昨冬「インフルエンザ診療マニュアル」を作成、この冬には新たな知見を盛り込んだ2007-2008年版を発表した。その最新版をもとに、インフルエンザ診療のポイントをピックアップした。2回目のテーマは「インフルエンザの診断 ―迅速診断を中心に―」。

 インフルエンザは特に発症早期において、臨床症状のみで診断することは必ずしも容易ではなく、迅速診断が必要となる。

 ここ数年普及したイムノクロマト法を用いた迅速抗原検出キットは、特別な器具が要らずに、診察室でも実施可能な診断法である。キットは年々改良され、検体採取者の技量も上がってきて、感度・特異度ともに向上してきている。

 過去5シーズンにウイルス培養、PCRと比較して得られた感度は、A型では90%以上あり、B型でも最近は90%前後以上になっている(表2-1)。

表2-1 迅速診断キットの感度

 現在使用されているキットは、ヒトに感染するA型およびB型の多くのウイルスを検出でき、A型ではヒト由来のH1、H2、H3を含め全ての亜型を検出できると報告されている。また動物のインフルエンザの診断にも使用可能であり、さらに新型インフルエンザの検出にも役立つと考えられるが、従来のA型インフルエンザと新型インフルエンザとを区別することはできない。

図2-1 スワブの持ち方

図2-2 咽頭の拭い方

 具体的な検体の採り方は以下となる。

 スワブの持ち方は図2-1の通り。咽頭の拭い方は、スワブを口腔から咽頭に挿入し、咽頭全体の発赤部位を中心にスワブの先端を粘膜面にしっかりと接触させ、数回擦過する。この時口蓋垂をはねあげるようにして後ろの上咽頭まで拭うのが理想的である。粘膜表皮も一緒に採取できるよう、ある程度強く、ただし出血しない程度で擦過する(図2-2)。

 鼻腔の拭い方は、小児の場合はベッドへ寝かせ、介助者が頭と手を固定する。鼻孔の形や方向は個人差が大きいので事前にペンライトで確認した後に、スワブを鼻腔孔から耳孔を結ぶ線にほぼ平行に、鼻腔底に沿ってゆっくりと数mm挿入し、抵抗を生じたところで止める。危険防止のため、決して無理に挿入してはならない。スワブを10秒間そのままの位置に保ち、鼻汁を浸透させた後、ゆっくりと回転させながら引き抜く(図2-3)。

図2-3 鼻腔の拭い方

 鼻腔吸引液は、小児で鼻汁が多い場合に検体として有用である。ベッドへ寝かせ、介助者は頭と手を固定する。吸引トラップの挿入は鼻腔孔から耳孔を結ぶ線を想定してから行う。吸引トラップを吸引ポンプにつなぎ、もう片方のチューブを鼻腔の最奥部までしっかりと挿入して陰圧にし鼻咽頭分泌液を採取する(図2-4)。

図2-4 鼻腔吸引液

 最近あるキットで、鼻かみ(ビニールシート等を使用)で得られた鼻汁検体でも鼻腔拭いと高い一致率(A型95.4%、B型96.1%)、同等の診断精度(同92.1%、96.1%)が示された43)。このキットは今シーズンから鼻汁検体も保険適応になっている。

 現在用いられているキットの添付文書では、判定時間は15分が多いが、実際にはさらに短時間で判定可能なことが多い30-32,107)

(注)本マニュアルは日本臨床内科医会誌2007年12月号の臨時付録ですが、日本臨床内科医会事務局(東京都医師会館内、電話:03-3259-6111)でも入手可能です。


★参考文献
30) 岩城紀男,ほか.インフルエンザ迅速診断キットの陽性反応時間と臨床的意義.臨床と研究83:1413-1417,2006
31) 柏木征三郎,ほか.2005年から2006年にかけてのインフルエンザの流行を振り返って.臨床と研究83:1579-1590,2006
32)河合直樹,ほか.迅速診断キットの判定時間.インフルエンザ7:279-284,2006
43) 岩城紀男,ほか.インフルエンザ抗原迅速診断の際の鼻かみ鼻汁検体の診断学的有用性について.臨牀と研究,84:1298-1302.2007.
107)インフルエンザ5,227-233,2004

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