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特集 インフルエンザ 2007/2008

【専門家に聞く】(No.4)
新型インフルエンザの早期警戒システムとしても期待大
MLインフルエンザ流行前線情報DB管理者 西藤成雄氏

 ITを利用することにより、臨床に直ちに役立つ情報源を構築し得えたのが、MLインフルエンザ流行前線情報データベース(ML-flu-DB、http://ml-flu.children.jp/)だ。アラーム機能が最大の特徴で、インフルエンザの異常な検出を、最も早く関係者に周知できる。2000年冬季にスタートしたこのプロジェクトには、毎年300人もの医師が参加している。管理者を務める西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニックの西藤成雄氏(写真)は、新型インフルエンザの発生も早期に発見できると期待している。

―― インフルエンザの流行情報を把握する上で、ML-flu-DBは、日常診療に欠かせないものになっています。

西藤 2000年の冬季にスタートして今季で8年目となります。毎年、小児科医を中心に300人以上の医師にご参加いただいていますが、有志として参加されている先生方の努力の賜物だと思います。

―― データベースの管理者という役目を担う先生の努力も、並大抵のものではないと思います。そもそも、なぜML-flu-DBを立ち上げたのですか。

西藤 国立感染症研究所感染症情報センターが発表する感染症週報(IDWR)では、診療の現場に届くまでに2、3週間かかってしまうので、インフルエンザの流行の立ち上がりや地域的な広がりをすばやくキャッチすることができなかったのです。そこで、たとえばメーリングリスト(ML)の参加者が、インフルエンザの検出件数を報告し合う仕組みができれば、直ちに流行情報を共有できるはずです。国立感染症研究所感染症情報センターの砂川富正先生のアイデアですが、多くの医師がこの考えに賛同したのです。

図1-ML-flu-DBをもとにリアルタイムで作成されるインフルエンザ流行マップ(特集・インフルエンザ2007/2008でも掲載中です)

―― 改めて、ML-flu-DBの概要を教えてください。

西藤 1回でも報告していただいている医師は、毎年300人以上にのぼります。2006/2007シーズンでは380人ほどになりました。こうした参加医師が自らが診療したインフルエンザの症例をインターネットを通じて症例データベースに登録します。データベースに登録されると、おなじみの日本地図上の集計(インフルエンザ流行マップ、図1)や報告数のグラフに反映されるのです。インフルエンザのタイプやワクチン接種歴、使用した薬剤に関する情報などの集計もリアルタイムにできます。こうした情報は、日集計、週集計としてメーリングリストで配信しています。

―― 参加医師一人ひとりが登録し情報を持ち寄ることで、リアルタイムのデータベースが出来上がり、その情報を地域ごとあるいは日ごとの集計データとして、参加医師全員が共有し、診療に役立ているわけですね。

西藤 ご存知のように、インフルエンザ流行マップなどは一般にも公開しています。

―― 流行状況の最新情報を把握する装置として、一般の人も重宝していると思います。

西藤 現在は、厚生労働省科学研究の「効果的な感染症サーベイランスの評価及び改良に関する研究」(班長;国立感染症研究所感染症情報センターの谷口清洲氏)の一環として運営されています。

―― インフルエンザの異常を検出するというアラーム機能を最大の目標とされているわけですが、サーベイランスとしても評価できるようになってきたとうかがいました。

図1-ML-flu-DBとIDWRのグラフの比較(2006/2007シーズン)

図2-ML-flu-DBとIDWRのグラフの比較(2004/2005シーズン)

図3-ML-flu-DBとIDWRのグラフの比較(2000/2001シーズン)

西藤 有志による自主的な報告は果たして実際の流行を反映するのか、という疑問は当初から投げかけられていました。図2は、2006/2007シーズンの報告数の推移ですが、IDWRのグラフとほぼ重なっています。2004/2005シーズン(図3)、2000/2001シーズン(図4)などと比べてみても、私たちのデータベースとIDWRの報告数は驚くほど一致することがお分かりいただけると思います。

―― 有志の医療機関からの任意の情報提供であっても、報告数の推移はIDWRとほとんど変わらないとは驚きです。

西藤 意欲的に診断をされる300名を越える先生方が集まったことで、IDWRとほとんど変わらない集計結果が出ています。もちろん限界もあります。最も報告が多い週は一致しますが、どの年も立ち上がりはML-flu-DBが早くて、減少も早い傾向があるのです。ML-flu-DBは1例ずつの報告で、定点の報告に比べると手間がかかります。忙しくなってくるとどうしてもML-flu-DBに報告しきれない場合があるのだろうと思います。とはいえ、ML-flu-DBの目的は、流行の立ち上がりを知らせ合うプロジェクトです。それはこれからも普遍なのです。

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