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特集 インフルエンザ 2007/2008

【2006/2007レビュー】
異常行動発症37人のうち11人が治療開始前に発症

日本臨床内科医学会で質疑応答に臨む廣津氏

 2006/2007シーズンで最も波紋を巻き起こしたトピックスといえば、抗インフルエンザ薬と問題行動の関係だ。まだ因果関係は不明だが、ここにきて、主としてオセルタミビルの副作用として指摘されてきた異常行動は、薬剤によるものとは考えにくいことを示唆するデータが報告された。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班副班長の廣津伸夫氏(写真)が、2006/2007シーズンに自院で行った調査によって明らかになった。このデータをもとに廣津氏は、「インフルエンザそのものに因る精神神経症状ではないか」との見解を示した。

 9月に開催された日本臨床内科医学会。インフルエンザをテーマとするシンポジウムの席上、廣津氏は、インフルエンザの家庭内感染において「小児」が重要な役割を果たしていることを報告した(詳細は「専門家に聞く」で紹介予定)。その後の質疑応答で、有害事象についての質問があり、それに答える形で廣津氏は、抗インフルエンザ治療薬による治療開始前に発症していた症例があると指摘し、「異常行動は薬剤によるものとは考えにくいことを示唆する」とした。

 その後の取材で廣津氏は、まず以下のデータを提示した。

 2006/2007シーズンに廣津医院で行った調査では、18歳以下のインフルエンザ確定診断症例217人のうち37人に異常行動を認めた。異常行動は、オセルタミビルの副作用と報道されていたが、ザナミビル使用例にも見られた。さらに、異常行動発症37人のうち11人(30%)が治療開始前に発症していた。こうした事実から、「異常行動は薬剤によるものとは考えられず、インフルエンザそのものに因る精神神経症状と思われる」(廣津氏)と結論した。

 問題行動の主な症状は、「いきなり起き上がり走り出す」「いきなり自分の手首をカッターで切りそうになる」といった衝動的な例や、既往として、過去のインフルエンザ罹患時に「玄関のドアを開けて出て行きそうになった」というような、事故に直結するような行動もあった。しかしながら、全般的には軽微だったという。

 問題行動の事例の頻度がかなり高いように思えるが、その理由は、廣津氏と保護者との信頼関係の深さにあるようだ。廣津氏は、インフルエンザにおける異常行動については初診時に、前もって保護者に注意深く観察するよう依頼していた。具体的には、インフルエンザ療養中の治療状況と臨床症状の推移の経時的変化だけでなく、その間に生じた精神神経症状の発生状況を詳細に、それも時間経過とともに観察・記録してもらうよう依頼するという徹底振りだった。

 詳細な因果関係の解明は、今後に委ねるにしても、異常行動が薬剤によるものとは考えにくいことを示唆するデータは貴重なものだ。

 廣津氏は、こうした事実から言えることとして以下を強調している。「若年者のインフルエンザ罹患時には、薬剤使用に関わらず、病初期より家族の注意深い観察が必要だということが改めて明らかになった。そのことが異常行動による事故を防ぐ重要な鍵になると思う」。

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