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特集 インフルエンザ 2007/2008

【専門家に聞く】(No.3)
家庭内感染を封じ込める鍵は「小児」
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班副班長 廣津伸夫氏

―― 0~6歳児が第1感染者となった場合に、ほかの家族に感染が発生する率が高いのはなぜなのでしょうか。

廣津  インフルエンザの治療をおこなった後、インフルエンザウイルスがいつまで体内に残っているかを調べたところ、小児の方が成人よりウイルスの残存期間が長いと言う結果を得ましたが、その事実が物語っていると思います。

―― 第1感染者の発生から第2感染者の発生までの期間もお調べになっていました。

廣津  図1をご覧ください。A型の場合、1日目で25人、2日目で47人、3日目で44人でした。2日目に大きなピークがありました。B型の場合、ピークは遅めで、1日目が14人、2日目が15人、3日目が19人、さらに5日目も19人でした。3日目と5日目にピークがありました。第2感染者が発生するまでの期間は、想像以上に長いことが分かりました。

図1-第1感染者から第2感染者発症までの経過日数(日本臨床内科医学会、2007)

―― 家庭内で第1感染者が確認されたら、長期にわたる対応が必要ということですね。家庭内での感染経路の方はいかがですか。

廣津  家庭内感染の第1感染者に占める割合は、A型では父親9.8%、母親9.1%だったのに対し、子供は80.5%でした(図2)。B型では、父親8.7%、母親19.4%だったのに対し、子供は70.9%でした(図3)。年齢別では、0~6歳児の割合が子供の6割ほどを占めており、乳幼児が感染源として大きな役割を果たしていることが分りました。

図2-インフルエンザAにおける感染経路(日本臨床内科医学会、2007)

図3-インフルエンザBにおける感染経路(日本臨床内科医学会、2007)

―― 第2感染者に着目すると、母親の割合が子供に次いで目立つようです。

廣津  母親の場合、総罹患者132人のうち98人が家庭内で感染を受けていました。母親は、子供の看病に当たることが多いため、感染する機会も多いと言えます。

―― ウイルス拡散を防ぐ上で、小児への対策が重要なことが明らかになったわけですが、具体的にはどのようにすればいいのでしょう。

廣津  「小児からの感染」と「小児への感染」を防ぐことが大事になります。まずは、家庭内に持ち込まないように予防に心がけることだと思います。その上で、もしも家庭内で発生したら、第2次感染を防ぐ手立てをとることです。特に看病に当たることの多い母親は、家庭内であってもマスクをするなどの予防が必要になると思います。家庭内での感染を広げないためにも、医師による患者指導がますます大事になってきます。もちろん啓蒙も必要です。私のところでは、パンフレット(写真1、2)を作って配布するようにしています。

写真1-廣津医院で配布しているパンフレットの一部(現在、製作中) 看病している母親がマスクをしている姿が描かれている。

写真2-患児や親御さんらの疑問に答えるためパンフレットに掲載されたQ&A。

―― 最後に「小児」の治療面をうかがいたいのですが、やはりインフルエンザ治療薬と異常行動の問題が気になります。

廣津 2006/2007シーズンに当院で行った調査では、18歳以下のインフルエンザ確定診断症例217人のうち、「いつもとは違う言動が見られた」とご家族から報告を受けた症例は37人に上ります。異常行動は、オセルタミビルの副作用と報道されていますが、ザナミビル使用例にも見られ、さらに、異常行動発症37人のうち11人(30%)が治療開始前に発症していました。こうした事実から、異常行動は薬剤によるものとは考えられず、インフルエンザそのものに因る精神神経症状と思われます。

―― 問題行動の中身はいかがですか。

廣津 症状は「いきなり起き上がり走り出す」「いきなり自分の手首をカッターで切りそうになる」といった衝動的な例や、既往として、過去のインフルエンザ罹患時に「玄関のドアを開けて出て行きそうになった」というような、事故に直結するような行動もありました。しかし、全般的には軽微でした。

―― かなり頻度が高いように思えます。これまでは気付かれていなかったのでしょうか。

廣津 インフルエンザにおける異常行動については、初診時に、前もって保護者に注意深く観察するよう依頼しています。具体的には、インフルエンザ療養中の治療状況と臨床症状の推移の経時的変化だけでなく、その間に生じた精神神経症状の発生状況を詳細に、それも時間経過とともに観察・記録してもらうよう依頼するのです。このようにすると、予想を超す数に上ることが分かったわけです。

―― より注意深く治療に当たらないといけません。

廣津 こうした事実から言えることは、若年者のインフルエンザ罹患時には、薬剤使用に関わらず、病初期より家族の注意深い観察が必要だということです。そのことが異常行動による事故を防ぐ重要な鍵になると思います。

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