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特集 インフルエンザ 2007/2008

【専門家に聞く】(No.3)
家庭内感染を封じ込める鍵は「小児」
日本臨床内科医会インフルエンザ研究班副班長 廣津伸夫氏

 インフルエンザの家庭内感染において、「小児」が重要な役割を果たしていることが明らかになった。日本臨床内科医会インフルエンザ研究班が取り組んできた5シーズンにわたる実態調査から分かったものだ。副班長を務める廣津医院院長の廣津伸夫氏(写真)は、ウイルス拡散を防ぐために重要なのは「小児からの感染と小児への感染を防ぐこと」と強調する。

―― 先生方はこれまで、シーズンごとに家庭内、あるいは小学校内に注目し、インフルエンザの感染過程を調査されてきました。今回、5シーズンにわたる実態調査の分析で、特に「小児」に焦点を当てたのはなぜなのでしょうか。

廣津  子供が学校からインフルエンザをもらってきたとか、お兄ちゃんから下の子に感染してしまったなどというのは、日常診療においてごく普通に経験することです。これまでも、家庭内感染では感染源として「小児」が重要な役割を果たしているとの指摘は少なくありませんでした。しかし、きちっと実態を把握した報告は、ほとんどなかったのが現状です。

―― しっかりとデータを把握して、その上で対策を議論しようということですか。

廣津  そうです。そのために、家庭内感染における感染率や感染期間、感染経路などを検討し、その中での「小児」の役割を明らかにしたかったのです。

―― 5シーズンにわたる実態調査ですから、開業医のお立場からして大変だったのではないかと推察しました。

廣津  開業医だからこそできたのだと思っています。家庭内感染の現場に一番近いところにいるのは開業医ですから。

―― 日本臨床内科医会学会での発表を聞かせていただきましたが、再度、今回の家庭内感染の実態調査について詳しくお伺いしたいと思います。

廣津  まず家庭内調査の対象ですが、2001/2002から2005/2006シーズンまでの5シーズンにわたって、計1234家族、1609人を観察しました(表1)。インフルエンザの診断基準は、(1)突然の発症、(2)38℃を超える発熱、(3)上気道炎症状、(4)全身倦怠などの全身症状です。確定診断は、Capilia Flu A、Bまたは、Capilia Flu A+B陽性です。家庭内感染の観察期間は、第1罹患者の把握から2週間としました。

表1-家庭内調査の対象(日本臨床内科医学会、2007)

―― 家庭内感染の感染率はいかがでしたか。

廣津  家庭内にインフルエンザウイルスが持ち込まれると、2次感染者の発生率は、個人単位でみると、A型は9.6%、B型は9.8%でした。この5シーズン全体の平均感染率はA型が4.3%、B型が2.7%でしたから、家庭内感染率は、市中感染の2から3倍に達していました。

―― 3倍も高いとは驚きです。ウイルス拡散を防ぐという意味では、家庭内感染対策がいかに重要であるかが分かります。

廣津  次に私たちは、第1感染者を基準に、ほかの家族に感染が発生する割合(続発感染者の発生率)をみました。第1感染者を祖父母、父、母、子供別に、さらに子供は年齢層別に分析したのです。すると、第1感染者が0~3歳児の場合、ほかの家族に感染が確認された家族数の割合は28.3%、4~6歳児では同様に31.7%となり、6歳以下の子供で高率だったのです。個人単位でみると全体では9.7%でしたが、0~3歳児で12.9%、4~6歳児で12.5%とやはり高率でした。

―― A型、B型の別ではいかがでしたか。

廣津  個人単位ですが、A型では0~3歳児で13.6%、4~6歳児で13.3%でした(表2)。B型では、0~3歳児で11.3%、4~6歳児で11.5%でした(表3)。B型では母親も11.3%と高かったのが特徴の一つです。

表2-インフルエンザAの家族内感染(日本臨床内科医学会、2007)

表3-インフルエンザBの家族内感染(日本臨床内科医学会、2007)

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